2季目を迎えるリーグワンの日程が9月16日に発表されました。今季は12月17日に開幕します。連覇を狙う埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)は昨季4位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)とホーム熊谷ラグビー場で対戦します。「エキサイティングなカードを提供したい」(リーグワン東海林一専務理事)と昨季の順位が近いチーム同士の対戦が組まれました。12月の開幕に向け、埼玉WKの飯島均ゼネラルマネジャー(GM)に話を伺いました。
――2季目の開幕は、昨季6季ぶりに4強入りを果たしたBL東京と対戦します。
飯島均: BL東京の府中市、我々の熊谷市はいずれもラグビータウンとして有名です。ラグビー面だけでなく、まちづくりでも負けたくない。良きライバルだと思っています。BL東京は闘志を全面に出してくるチーム。だからこそワイルドナイツは内に秘めた闘志で強さを示したい。また個人的にも私は府中西高校でラグビーを始めた縁があり、府中に知り合いも多いので特に負けたくないですね。
――今季から埼玉WKには2メートル超ロックのルード・デヤハー選手、センターのダミアン・デアレンデ選手という南アフリカで50キャップ以上を誇る、2019年W杯日本大会の優勝メンバーが加わりました。
飯島: 2人とも世界のベストフィフティーンに選ばれてもおかしくない選手。年齢的にも脂が乗っている時期です。特にデアレンデは強いし、速くてパスもキックもできる。19-20年の1シーズンだけワイルドナイツでプレーしましたが、同じセンターのディラン・ライリーが開花したひとつのきっかけは彼とコンビを組んだことが大きかった。昨季までいた元ウェールズ代表のハドレー・パークスも素晴らしい選手ですが、私はデアレンデが世界一のセンターだと思っている。彼とはチームを離れた後も引き続き連絡を取っていました。
――優勝した昨季以上の陣容で臨めると?
飯島: 満足のいく補強だと思っています。ウイング/センターのマノア・ラトゥ、ロック/フランカーのエセイ・ハアンガナなど若くて伸び盛りの良い選手がいる。新加入のロックのリアム・ミッチェルもプレシーズンにいい動きを見せていました。チーム内でもいい競争ができていると感じていますし、非常に魅力的で強いチームであると自負しています。
――9月11日にリーグワン優勝パレードを熊谷市で行いました。約1万人のファンが集まったそうですね。過去において優勝パレードを行ったことは?
飯島: 今回が初めてです。天気と人が集まるかどうかが心配でした。移転1年目ということもありましたし、来ていただけるかどうか、と。両方いらぬ心配に終わって良かったです。市役所前からスタートしてコミュニティ広場まで、ファンが途切れることはなかった。「たくさん来てくれてありがとう」という気持ちでいっぱいです。
――パレード後の優勝報告セレモニーには、熊谷市の小林哲也市長、埼玉県の大野元裕知事に加え、熊谷移転前の群馬県大泉町・村山俊明町長、埼玉県行田市の石井直彦市長、深谷市の小島進市長も出席しました。
飯島: 皆様、お忙しい中、自身の市町村を越えて来てくださった。ホストタウンの熊谷市だけでなく、近隣の市町村との結び付きを強めて、ラグビーに関わらずいろいろな活動で力を合わせていきたいと思っています。
――セレモニーの挨拶で女子中学生から手紙をいただいたエピソードを紹介されましたね。
飯島: はい。彼女は炎天下の中でも、選手の個人練習などを見学していた熊谷市内の中学生です。ラグビー、ワイルドナイツの魅力に惹かれ、ファンになってくれた。その彼女から「学校の壁新聞などで、ワイルドナイツの魅力を伝えようとしているのですが、なかなかうまくいきません。力を貸してもらえませんか?」という手紙をいただいたんです。その手紙に力をもらえましたし、ワイルドナイツが子どもたちにエナジーを与えていることを誇らしく感じました。
――パレードから6日後の17日には11人制ラグビーの紅白戦を行いました。一般的な15人制と、オリンピック種目の7人制、オーストラリアでリーグがある13人制はラグビーファンにも馴染みがあると思いますが、11人制は珍しい。
飯島: 15人制よりもスペースが広い分、1人あたりの走行距離が増えます。ブレイクダウン(ボールの争奪戦)では3、4人も人数をかけられないので、個人のスキルが15人制以上に問われる。15人制のトレーニングとしても効果的なものだと思っています。今回はファンクラブ・後援会会員限定の公開でしたが2000人以上が集まりました。将来的にはいくつかのチームを交えて大会を行い、海外のクラブも参加できるようなものにしたいですね。
――その翌日には熊谷ラグビー場で行われた「埼玉県スポーツフェスティバル2022 in 熊谷」内のeスポーツ大会の“eSports DREAM CHALLENGE”「交流会」に埼玉WKの選手が参加しました。ラグビー場でeスポーツとは、意外な組み合わせです。
飯島: 熊谷ラグビー場の観客席にはボックス席やラウンジ席という広いスペースがあるので、そこでゲームを楽しんでいただきました。また2つの大きなビジョンで、プレイ画面やプレイヤーの様子を映し出すことができます。ワイルドナイツからは新妻汰一、本堂杏虎が参加しましたが、プロの方からは「かなりレベルが高い」と褒めていただきました。
――「eスポーツに来た方がいい」とスカウトされませんでしたか?
飯島: もしされたら、福岡堅樹(現・アンバサダー)じゃないけど、二刀流でやってもらいますよ(笑)。
――eスポーツは身体を動かさないことを理由に「ゲームであってスポーツではない」と否定的な声が少なくありません。フィジカルスポーツのラグビーとの親和性はいかがでしょうか?
飯島: 生前、平尾誠二さんが「ラグビー対サッカー、ラグビー対野球ではなく、いずれスポーツ対ゲームになる」ということをおっしゃっていましたが、私たちは敵じゃなく味方にできると思っています。スポーツとゲームの共生ですね。私は観ていてきれいな連携が続くと、気持ちが良い。それがスポーツの魅力のひとつ。例えばサッカーゲームでパスがきれいにつながってゴールが決まった時の快感と、リアルで成功した快感は似ています。その快感を疑似的に体験できるのがバーチャルの世界。リアルとバーチャルでも快感の部分は同じ。競争するのではなくリアルスポーツの入り口としてのeスポーツに可能性を感じています。
――今季新たに取り組みたいことは?
飯島: ローカルとグローバル、両面で力を入れていきたい。リーグワンは事業性、地域性が大きな柱です。そのためにもローカルの取り組みは特に大事になってくる。先日、久喜市の梅田修一市長に「小学校の遠足にラグビー観戦はどうですか?」と提案しました。観戦後は競技会場を使ってイベントを行うことができますから。例えば飯盒炊飯でカレーを食べてからラグビーを観るとか。行政とスクラムを組み、ラグビーファンをもっと増やしていきたい。
――グローバルでは?
飯島: 11月にスーパーラグビー(SR)のレッズ(オーストラリア)と熊谷ラグビー場で親善試合を行い、そこでワイルドナイツの世界での立ち位置を測ることができる。25年クラブW杯開催構想が話題になっていますが、その第一歩にもなると考えています。ラグビーでしかできない国際交流を積極的に図っていきたいですね。
――最後に改めて今季の意気込みを。
飯島: 前身のトップリーグ時代を含め、ここ3シーズンはリーグ戦無敗ですが、コロナによって1シーズンは中止(19-20シーズンは第6節で中止)、1シーズンは2つの不戦敗(21-22シーズン)があった。完全に無敗で終えたわけではない。チームとしては、この2年の経験を生かし、ワイルドナイツの本当の力を見せるシーズンにしたい。その結果として優勝を勝ち取りたいと思っています。
<飯島均(いいじま・ひとし)プロフィール>
1964年9月1日、東京都出身。現役時代のポジションは主にフランカー。府中西高を経て大東文化大に進む。大学4年の時、大学選手権優勝を経験。三洋電機(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)に入社。95年度の全国社会人大会初制覇を最後に現役を引退した。96年度から99年度まで三洋電機の監督を歴任。その後、2001年から03年までラグビー日本代表のコーチを務め、05年度からは三洋電機に復帰した。08年度より再び監督に就任し、日本選手権の連覇を3に伸ばし、10年度には悲願のトップリーグ初優勝に導いた。ラグビー部長を経て、現在はゼネラルマネジャーを務める。
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