結論から言えば、2連敗という戦績ながら実り多き欧州遠征となったのではないでしょうか。世界ランキング2位のフランス代表との秋のテストマッチシリーズ最終戦、ジャパンはダブルスコアの17対35で敗れはしたものの、来年9月開幕のW杯フランス大会に向け、目標である「ベスト8以上」への手応えを掴んだようです。
ジャパンは「レ・ブルー」の愛称で知られるフランスと過去12回戦い、一度も勝てていません(11敗1分け)。しかし、今年に限っていえば23対42(7月2日)、15対20(同9日)と、その差は縮まってきているように思われます。
今回は敵地に乗り込んでのテストマッチ、しかもトゥールーズは来年9月に開幕するW杯フランス大会で、ジャパンがチリ代表、サモア代表と戦う舞台です。スタッド・ド・トゥールーズで戦うということ自体に意味がありました。
ラグビーのW杯は過去、9回行われていますが、まだフランスは優勝がありません。1987年、99年、2011年大会の準優勝が最高です。それだけにホストカントリーとして迎える2度目のW杯、世界一は「レ・ブルー」のミッションといってもいいでしょう。
またトゥールーズは、フランスラグビーにとって“聖地”と呼ばれるまちです。国内で最もラグビーが盛んと言われており、地元クラブのスタッド・トゥールーザンはトップ14(国内リーグ)を代表する強豪チーム。今回、ジャパンと戦ったメンバーの中にも、フッカーのジュリアン・マルシャン選手、スタンドオフのロマン・ヌタマック選手、フルバックのトーマ・ラモス選手らがいました。前戦の退場により出場停止となったスクラムハーフのアントワーヌ・デュポン選手も所属しています。W杯本番では出てくることでしょう。
さて今年のフランスですが、シックスネーションズ(欧州6カ国対抗)でグランドスラム(全勝優勝)を達成するなどテストマッチ12連勝中と絶好調。攻守に全くスキがありません。
開始7分、大観衆の「レ・ブルー」という声援をバックにフランスが先制します。スタンドオフのヌタマック選手がグラバーキックでディフェンスラインの裏を突き、そのボールをウイングのダミアン・ペノー選手が足で前方に運びます。そのままインゴール左隅に飛び込み、5対0。
ジャパンはその後もPGで得点を積み重ねられ、36分に2本目のトライを奪われます。決めたのはフランカーのシャルル・オリボン選手でした。
前半を3対21で終えたジャパンでしたが、このまま終わる予感はありませんでした。というのもシャンパンラグビーと呼ばれる歯切れのいいラグビーを得意とするフランスですが、前半、少々飛ばし過ぎの感がありました。あのようなハイスパートを後半も維持できるわけがありません。
ジャパンの初トライは2分、自陣でスクラムハーフ齋藤直人選手が後方から走り込んできたセンター中野将伍選手にパス。齋藤選手はフォローしながら、リターンをもらうとインゴール左中間へ飛び込みます。早稲田大学-東京サントリーサンゴリアスで同期の、まさに息のぴったり合った会心のトライでした。この2人のコンビプレーは本番でも期待できそうです。
ジャパンは23分にもコンビネーションを発揮します。敵陣深くでのラインアウトでフッカー坂手淳史選手がスローしたボールをフランカーのリーチ・マイケル選手がキャッチすると、フランカーのピーター・ラブスカフニ選手へ。再びパスを受けた坂手選手がマークのいないウイングのシオサイア・フィフィタ選手にラストパス。巧妙にデザインされた“技あり”のトライでした。
しかし、終わってみれば17対35。ジャパンの“現在値”を示す実力通りのスコアのように映りました。
試合後のジェイミー・ジョセフヘッドコーチです。
「フィジカルでは先週からの反省点を生かし、プレッシャーをかけることができた。好調なフランスと、そしてトゥールーズでプレーできたこともプラス。ティア1と戦うことに慣れてきた。昨年はアイルランドとスコットランド、今年はニュージーランド、イングランド、フランスと対戦できたことは、W杯に向けていい方向に向かっている」
続けて坂手キャプテン。
「準備してきたプレーはディテールを詰めばトライを取れる。ティア1レベルのチームとアウェーで試合をできたことはすごく大きな経験となりました」
残念だったのは、2つ目のトライを奪い17対28と11点差に迫った直後です。まだ時間は15分以上残っていました。もうひとつトライを奪えば、アップセットが起きたかもしれません。しかし次にスコアしたのはフランスでした。
「ここぞというチャンスの時にポイントをとるというディテールを大事にしないといけない。その点はできなかった部分がある」とは坂手キャプテン。ゲームには“ツボ”があります。そこを、どちらが押さえるか。12月から始まるリーグワンで勝負勘を磨いてもらいたいものです。
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