W杯フランス大会に臨むジャパンに強力な“助っ人”が加わりました。代表専属シェフの西芳照さんです。西さんは専属シェフとしてW杯に5大会連続(2006年ドイツ大会~22年カタール大会)でサッカー日本代表チームに帯同した実績を持つ、この道のスペシャリストです。
まずは西さんの経歴を紹介しましょう。福島県出身の61歳。京懐石料理店での修業を経て、1999年に福島県のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」の総料理長に就任しました。その仕事ぶりが認められ、2004年3月に日本代表の専属シェフに就任しました。
西さんの初仕事は、04年3月31日、W杯ドイツ大会アジア1次予選・アウェーのシンガポール戦です。
西さんが厨房に立つようになったのには理由があります。同年3月1日から5日かけてU-23日本代表がアテネ五輪アジア地区最終予選でUAEに遠征した際、多くの選手が食中毒に見舞われました。それを問題視した日本サッカー協会は、信頼の置ける日本人シェフに白羽の矢を立てたのです。
チームを率いていた山本昌邦さんに、“集団食中毒事件”の真相について聞いたことがあります。
「あれは3月4日の午前中です。トレーニングをしていると、“ちょっとお腹が……”という選手がパラパラと出てきた。全貌がわかったのは、その後です。メディカルスタッフから報告が入り、これは大変なことになったと……」
――アウェーにアクシデントはつきものと言われますが、まさかここまでの事態は予測していなかったと?
「個人的には泣きたい気持ちでした。ここまで2年間、五輪のために準備をしてきて、いざ本番になってこれですからね。そりゃ“ツキがないなァ……”と多少は落ち込みましたよ。しかし、そこで選手たちに同情したところで何も始まらない。だから逆に選手たちには、“これは神様が与えた試練だ。オマエたちにアテネに出られる資格があるかどうかを神様が試しているんだ!”と言って発破をかけました」
幸い、翌日のUAE戦に日本は2対0で勝利したものの、山本さんによると、インタビューを受けている自らの傍を、何人もの選手がフラフラになって通り過ぎていったそうです。
こうした事情があるものですから、協会からの西さんへの要望の第一は<「滞在先のホテルでの食事の衛生面にくれぐれも気を配って欲しい」>(西芳照『サムライブルーの料理人』白水社)というものでした。おそらくラグビー協会も西さんに、同様のことを要求しているはずです。
現在、ジャパンはイタリアに遠征中です。現地到着後の20日(日本時間)、西さんは自身のX(旧Twitter)で初ランチの料理写真を投稿しました。
選手たちの反応も“星三つ”です。
<美味しすぎました。ランチ食べてすぐ晩御飯が楽しみになってました>(流大選手X)
<ご飯が本当に美味しい。毎日が楽しみです!!>(姫野和樹選手・同)
<外食しなくて済むけど、美味しすぎて体重コントロールが難しい>(中村亮土選手・同)
専属シェフが代表チームに果たす役割は、衛生面に気を配り、選手の胃袋を満たすことだけではありません。
<選手たちがしっかり食べられて、試合で十分に力を発揮できるよう心を配って料理しているだけです。海外遠征先で選手の皆さんに出す食事では、栄養や衛生に関する知識を持ってつくることも重要なのですが、同時に海外で試合をする際の緊張感をほぐし、身体的にも精神的にもコンディションが整えられるように、楽しく食べてもらうことが重要だと思っています>(同前)
先の女子サッカーW杯では、ベスト8進出を果たしたなでしこジャパンをサポートした西さん。今度は“桜の戦士”を全力で支えます。
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