リーグワンのディビジョン1も後半戦に突入しました。コベルコ神戸スティーラーズは第9節終了時点で3勝6敗の7位。V7など日本選手権最多10度の優勝を誇る名門が苦戦を強いられています。そんな中、キラリと光る活躍をしているのが、21歳の万能型プレーヤー李承信選手です。
李選手は身長176センチ、体重85キロ。ポジションはスタンドオフ登録となっていますが、センター、フルバックもこなせます。パス、キック、ランのスキルが高い万能型プレーヤーです。
まずは神戸S入団までの歩みを紹介しましょう。地元神戸出身の李選手は4歳でラグビーを始め、兵庫県ラグビースクールに通いながら、小中学時代はサッカー部に所属していました。大阪朝鮮高級学校進学からラグビー一本に絞り、高校日本代表にも選出、3年時には花園出場を果たしました。
高校卒業後は強豪・帝京大学に進み、1年時から出場機会を得ました。ジュニア・ジャパン(20歳前後の日本代表)にも選ばれ、主将として20年3月に行われた「ワールドラグビーパシフィック・チャレンジ2020」の優勝に貢献しました。ニュージーランドへラグビー留学するため、同年春に帝京大を中退しましたが、コロナ禍の影響で海外挑戦は白紙に。そんな李選手に救いの手を差し伸べたのが、兵庫県ラグビースクールでコーチを務めた際に彼を指導した神戸Sの福本正幸チームディレクター(TD)でした。その経緯を福本TDは、こう語ります。
「彼は兵庫県ラグビースクール出身。我々もなんとか力になりたいと思っていたんです。帝京大や周囲の理解も得て、ウチで練習できることになり、チームに加入することになりました」
さらに続けます。
「彼は中学2年時、既に高校生レベルの実力を持っていました。2年生ながらチーム全体を引っ張るリーダーシップを持ち、パス、キック、ランを高いレベルで兼ね備えていた。ラグビーIQも非常に高い選手でしたね。もちろん高校に進んでからの活躍も見ていました。彼と直接話はしていませんが“高校卒業後、すぐに(トップリーグで)活躍できるポテンシャルはあるな”と思っていました」
ルーキーイヤーとなった昨季、李選手はリーグ戦4試合、全て途中出場にとどまりましたが、バイスキャプテンとなった今季はここまで7試合に出場し、28得点をあげています。
印象的だったのは3月12日の第9節リコーブラックラムズ東京戦です。この試合まで神戸Sは2月6日の第5節(NECグリーンロケッツ東葛)以来、白星から遠ざかっていました。3月4日の第8節の東京サントリーサンゴリアス戦では17対56と大敗を喫し、9位に転落しました。
正念場の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場でのBR東京戦、李選手はセンターで先発出場しました。前半29分、敵陣深くでボールを受けると、右斜め後ろから走り込んできたスタンドオフのアーロン・クルーデン選手に絶妙なタイミングでパスを出し、トライをアシストしました。
ハーフタイムでクルーデン選手がベンチに下がると、後半からスタンドオフにポジションを変え、攻撃陣を牽引します。13分には自陣でボールを持ち、パスダミーを入れて相手を惑わすと、そこから細かいステップで4人をかわし、前進します。この突破を機に陣地を大きく晩回した神戸Sは、直後の相手ボールのラインアウトを奪いトライにつなげました。この“4人抜き”はリーグワンの公式ツイッターで<この人には「スペース」の意味が、他の選手と違うのかもしれない>(2022年3月12日配信)とプレー動画付きで紹介されるほどの反響がありました。
さらに試合終了間際には、針の穴を通すような正確なキックパスでウイングのアタアタ・モエアキオラ選手のトライを演出。後半はプレースキッカーも任され、3本のコンバージョンキックを全て成功させました。大車輪の活躍で神戸Sの約1カ月ぶりの白星(56対21)に大きく貢献したのです。
試合後、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた李選手は場内インタビューで「この勝利をきっかけに、もう一回強いスティーラーズとしてシーズンを戦い抜きたい」と力強く宣言しました。
チームは3月にニュージーランド代表84キャップを誇るベン・スミス選手の復帰と、南アフリカ代表19年W杯日本大会優勝メンバーであるルカニョ・アム選手の加入を発表しました。スタンドオフで、ニュージーランド代表50キャップのクルーデン選手も含め、海外のビッグネームたちと切磋琢磨することで、さらなる成長が見込める21歳です。
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