女子レフェリーの活躍が目立つようになってきました。2016年リオデジャネイロ五輪の7人制ラグビー、今年のスーパーラグビーでも女性が主審を担当しました。昨年秋に関東協会公認のB級資格を取得した早稲田大学3年の池田韻さんに話を訊きました。
――コロナ下で迎えるリーグ戦です。準備状況が気になります。
池田韻:それは私たちレフェリーも同じです。例年は春の大会と夏の菅平合宿でレフェリーを担当するのですが、今年度はまだ1試合も笛を吹けていません。
――早大は自粛中に少人数のグループをつくり、各グループが週1回のペースでオンラインミーティングをやっていたと伺いました。グループミーティングでは、試合動画を観て感想を話し合う機会を設けていたそうですね。
池田:はい。レフェリーとアナリストは各グループに毎週持ち回りで入り、レフェリーはペナルティーの解説、アナリストはアナリスト目線のポイントを話していました。レフェリー目線で試合の映像を観ることは以前から行っていました。今年は選手目線の話を聞く機会を得て、選手がどういうふうに考えながら試合をしているのかを知り、レフェリングの勉強になりました。
――現在はどのようなトレーニングを?
池田:普段は選手たちが参加しているフィットネストレーニングにレフェリーも参加しています。今年は例年に比べ、1人でフィットネスを鍛える時間が増えていますね。あとは試合形式のアタック&ディフェンスやスクラムの練習にレフェリーとして入ることが中心になります。今後は他大学の試合のレフェリング機会も増えていくでしょう。
――早大は昨年度の全国大学選手権大会優勝チームです。レフェリー目線で今年度のチームの特徴は?
池田:一昨年よりも去年、去年よりも今年の方がノーペナルティーの意識が強くなってきていると感じます。今は反則が起きる前に、選手同士で声を掛け合っています。“絶対ペナルティーを犯さない”という意識が特に高まっていると思いますね。
――池田さんがレフェリーを目指そうとしたきっかけは?
池田:元々は選手としてプレーしていたのですが、高校時代(福岡高)に肩をケガしたことで選手として卒業後もプレーをするのは難しい。そんな時、ラグビー部の顧問の先生がレフェリーをやっていたこともあり、私に「レフェリーをやってみたらどうか?」と声を掛けてくれました。高校3年の4月には、北九州市でワールドセブンズという7人制ラグビーの国際大会が開かれた時にレフェリーの補助員として大会に関わらせていただきました。そこでレフェリーに興味を持つようになったんです。
――憧れはリオデジャネイロ五輪の7人制ラグビーでレフェリーを担当した川崎桜子さんだと伺いました。
池田:桜子さんは私がレフェリーの補助員として参加したワールドセブンズでもレフェリーを担当していました。世界の舞台で活躍する日本人の姿を見て、“カッコイイな”と思ったことがレフェリーを目指す直接のきっかけになりましたね。
――早大を選んだ理由は?
池田:顧問の先生が菅平合宿に行った際に、当時の早稲田の監督に女子レフェリーでもラグビー部に入れるかどうかを聞いてくださったんです。私は早稲田のラグビー部に憧れていたこともあり、“早稲田でレフェリーをしたい”と気持ちを固めました。
――早大ラグビー部初の女子レフェリーについては意識しましたか?
池田:特別な思いはあまりありませんでした。高校時代、九州ラグビー協会の上原(睦未)さんが高校男子の大会でレフェリーを担当していたのを見ていたので、“女子だから男子の試合は吹けない”という意識はなかったですね。
――昨年の花園では初の女子レフェリーが誕生し、今年のスーパーラグビーでも女子レフェリーが笛を吹きました。
池田:ルール上、ライセンスさえあれば女性がトップレベルの試合を吹けないわけではありません。改めて実力さえあれば、性別関係なく吹けるんだと実感できたので、女子レフェリーの活躍はとても励みになります。
――昨年秋にB級レフェリーの資格を取得しました。それまでのC級と比べ、担当できる試合(B級は支部協会の主催公式試合)も増えました。
池田:私は関東協会の所属なので、同協会主催の公式戦の笛が吹けるようになりました。昨年度は関東協会主催の高校の試合も担当させていただきました。高校生に限らず、大学の4部リーグなど、いろいろなカテゴリーを担当させていただけるようになり、様々な試合を吹かせていただくことで、レフェリングの経験値、引き出しが増えていっている気がします。
――レフェリーの難しさ、やりがいは?
池田:選手時代は気にしていなかったことにも目を配らなくてはいけないので、とても大変ですね。ただレフェリーをやっていて楽しいと思うのは、選手時代には立てなかった場所に立てることです。私が選手を続けていたら早稲田の選手たちと同じグラウンドに立つことはできなかったでしょう。それにレフェリーをしているとラグビーの見方が広がるんです。レフェリーを経験したことで、視野が広がり、選手時代よりもラグビーIQが上がっていると思います。トップレベルの試合を見ても、選手時代以上に“ラグビーが面白い”と感じますね。
――試合中に特に意識していることは?
池田:自分の中では“この試合はうまくコントロールできないぞ”と感じた時にスイッチを切り替えることを意識しています。私が良くない時は試合に入り込み過ぎている時です。試合を俯瞰視できるようにメンタルを切り替えるようにしています。
――今後の目標は?
池田:卒業後もレフェリーを続けたいと思っています。早稲田で一緒に練習させていただいている分、女子レフェリーの中では速いテンポのラグビーへの対応が得意だと感じています。ただ今の自分には、これといった武器があるわけではありません。どちらかといえば器用貧乏。これからは自分の強みを見つけ、伸ばしていくことが課題だと思っています。
<池田韻(いけだ・ひびき)プロフィール>
1999年12月19日、福岡県福津市出身。小学2年でラグビーを始める。玄海ジュニアラグビークラブ-福岡レディース-福岡高校。主にスクラムハーフなどバックスでプレーした。高校卒業後、父親の影響で自身も憧れていた早稲田大学にレフェリーとして入部。同大初の女子レフェリーとなった。18年夏に東京都協会公認のC級レフェリーの資格を取得。昨年秋には関東協会公認のB級資格を取得した。「韻」という名前の由来は「余韻を残せる人生を送れるように」ことから付けられた。
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