2季目のリーグワンに向け、各チームが続々と始動しています。昨季、6季ぶりに4強入りを果たした東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)は8月15日、トッド・ブラックアダーヘッドコーチ(HC)就任4季目をスタートさせました。
1948年創部のBL東京は、リーグワンの前身トップリーグ(TL)で最多タイの5度、日本選手権では歴代4位タイの6度の優勝を誇る名門です。しかし近年は低迷し、最後に獲ったタイトルは2009-10シーズンのTLまで遡らなければなりません。TL初年度から続いていたベスト4以上という成績も15-16シーズンを最後に途絶えました。それだけに昨季の6季ぶり4強は、名門復活の狼煙だったと言っていいでしょう。
BL東京と言えば、前身の東芝府中時代からFWを軸にしたパワフルなラグビーが持ち味ですが、昨季はFW・BKが一体となったアタックが効果的でした。19-20シーズンにHCに就任したブラックアダーHCは「選手自身がプレーをしていて楽しく感じるようなアタッキングラグビーをやりたい」と感じ、それに沿ったチームづくりを進めました。
それはスポーツ放送局『J SPORTS』のラグビーサイトに掲載されているリーグワン・チームスタッツランキング(昨季リーグ戦の数字)に見ることができます。
BL東京はトライ、ボールキャリー、クリーンブレイク、ディフェンス突破数、ゲインメータ、オフロードパスの6項目中3項目で1位(オフロードパス192本、ボールキャリー1865回、ゲインメータ12659メートル)。ちなみにオフロードパスはタックルを受けた時にラックなどをつくらずにパスをつないだ数、ボールキャリーはボールを持って走った回数、ゲインメータはボールを持って進んだ距離のことです。
チームの充実ぶりは、リーグワンアワードでのベストフィフティーン、ジャパン&ジャパン予備軍のNDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)の選出(5月31日発表)からも窺えます。前者はロックのジェイコブ・ピアス選手、フランカーのマット・トッド選手、スクラムハーフ小川高廣選手の3人が選出されました。また後者には、代表常連のフランカー、リーチ・マイケル選手に加え、ノンキャップのスタンドオフ中尾隼太選手、ウイングのジョネ・ナイカブラ選手、フランカーのシオネ・ラベマイ選手に声がかかりました。
8月15日に新体制を発表したBL東京のリリースには今季も引き続き共同主将を任された小川選手とフランカー/ナンバーエイト德永祥尭選手のコメントが掲載されました。
<これまで積み上げたものに更に磨きをかけ、皆さまに勇気や感動をお届けできるようなラグビーを魅せます!>(小川選手)
<これまでトッド・ブラックアダーHC、チームが目指していたラグビーにさらに磨きをかけ、毎試合成長できるチームを構築するために頑張ります>(徳永選手)
2人の「磨きをかける」という言葉に昨季掴んだ自信がにじんでいます。選手数も昨季開幕時点の52人から今季は46人とスリム化。薫田真広ゼネラルマネジャー(GM)は「いい選手を育てていく文化は変えない。昨季、選手が大きく成長したことで現状の戦力を維持した」と説明しました。チームをより筋肉質の体質に変えるということでしょう。
昨年8月、リーグワン初年度を迎えるにあたり、BL東京は親会社の東芝から分社化し、ラグビー興行を目的とする組織に生まれ変わりました。今季の始動日に行われたオンライン記者会見では、荒岡義和社長が「日本を飛び越えて世界有数のユニークなラグビークラブに変わっていかないとダメ。そのためには強さだけでなく、唯一無二のチームとならなければいけない」と力説。改革の一環として、今年7月、大手広告代理店の電通に勤め、静岡県ラグビー協会の法人化などを手掛けた星野明宏さんがプロデューサーに就任しました。「彼にはブランディング、意識改革をやってもらっている」と荒岡社長。「人気、実力を兼ね備えたチームとして長く君臨していきたい」と名門復活を宣言しました。
また、この日の会見では、チームスピリットなるものも発表しました。
<“猛勇狼士”(もうゆうろうし) 我ら、接点無双、猛攻猛守の紳士なり。>
“勇狼”はチーム名のブレイブルーパスに由来し、“猛”はアグレッシブ、“士”は侍や紳士という意味が込められています。<我ら、接点無双>という一文にBL東京の誇りが見え隠れします。
かつて東芝と言えば、「親に見せられない練習」と表現された厳しいトレーニングが有名でした。OBで現アンバサダーの大野均さんは、それについて、こう語っていました。
「東芝の練習はとりあえず体をぶつけ合う。それでも練習が終わったら、みんな顔から血を流しながら笑い合っていました。きつい練習を共有することで、一体感が生まれ、チームとしてひとつにまとまるんです」
OBであり、チームの黄金期には監督も務めた薫田GMは、このチームスピリットについて「我々の魂の言葉であり、我々のラグビースタイルを表す言葉」と語り、あえて言語化した理由についてこう続けました。
「東芝らしさ、DNA、東芝府中ラグビー部とは何なのか。HC、選手と見つめ直し、今回の言語化に至った。選手、チームがグラウンド内外で常に立ち戻る場所を明確にし、皆さまに我々の行動、プレーがわかりやすく共感していただくため」
我ら、接点無双――。そこまで言い切った以上は、プレーに責任が伴います。猛勇狼士たちの接点での奮闘に注目です。
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