今年1月に発生した海底火山噴火で被害を受けたトンガ王国への復興支援を目的としたチャリティーマッチが、6月11日に東京・秩父宮ラグビー場で開催されました。対戦したのはジャパン予備軍のNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)で編成された「EMERGING BLOSSOMS(エマージング・ブロッサムズ)」と国内でプレーするトンガ出身選手を中心に構成された「TONGA SAMURAI XV(トンガ・サムライフィフティーン)」。試合とともに注目を集めたのが、トンガ・サムライフィフティーンの“シピタウ”でした。
キックオフ直前、トンガ代表と同じ赤のジャージーに身を包んだ25人がピッチに整列しました。シピタウのリーダーを務めたのはウイングのラトゥ・クルーガー選手。ジャパンとしてW杯3大会に出場し、32キャップを記録したラトゥ・ウィリアム志南利さんの息子です。ちなみラトゥさんはトンガ・サムライフィフティーンの監督でもあります。クルーガー選手が雄叫びを上げると、ジャパンのキャップを持つスタンドオフのレメキ・ロマノ・ラヴァ選手、プロップの中島イシレリ選手、フランカーのバツベイ・シオネ選手ら24人が対峙するエマージング・ブロッサムズの選手たち目がけ、一緒にセンターラインへにじり寄りました。
トンガ代表のウォー・クライ、“シピタウ”は地面を力強く踏みしめ、鍛え抜かれた肉体を打楽器のように打ち鳴らすニュージーランドの“ハカ”の迫力に負けません。特徴としては拳を振り上げ、地面に叩き付けるアクションが多いことです。2015年W杯イングランド大会ではニュージーランド代表とトンガ代表が対戦し、“シピタウ”と“ハカ”の競演に会場は大いに沸きました。
今回のトンガ・サムライフィフティーンによる“シピタウ”は、トンガ代表のものとは違い、オリジナルバージョンでした。試合前の高知合宿ではタウファ統悦コーチ兼マネジャーが「ラグビーの練習よりシピタウの練習時間の方が長かった」と言うほど、熱が入っていました。合宿中に取材対応した選手たちも声が枯れていました。メディアに対してもラグビー練習は公開だったのに対し、なぜか“シピタウ”は非公開でした。
「トンガにいる人たちへ“大丈夫だよ”というメッセージが込められています。それに加え、感謝の気持ちをシピタウの中に散りばめた。トンガと日本は互いに助け合い、絆を深めた。日本にいるトンガの選手は多くの方々に助けられてきた。その感謝の気持ちを伝えるために、つくれられたシピタウです」(バツベイ選手)
11日に初披露された“トンガ・サムライフィフティーン版シピタウ”は、特徴である拳を振り上げ、地面に叩き付ける動きを採り入れ、“本家シピタウ”に勝るとも劣らぬ力強い舞いでした。最後に全員で前方を指差し、「カンシャ!」と叫びました。キャプテンのバツベイ選手は「シピタウは試合の一部。今日の出来はパーフェクト。とてもうまくいった」と誇らし気な表情を浮かべていました。
ノーサイド後の場内インタビューで、トンガ・サムライフィフティーン主将のバツベイ選手は「日本の皆さんがトンガのサポートをしてくれて感謝しています。ありがとうございました!」と日本語で感謝の言葉を述べました。エマージング・ブロッサムズの主将を務めたスタンドオフ田村優選手は「トンガで被災された方々や、その家族である僕たちの仲間たちが苦しんでいる姿を見ていました。チームとしても日本ラグビーとしても大事な試合だった」と殊勝な面持ちで語りました。
この“シピタウ”は試合終了後、観客に向け、再び披露されました。ラトゥ監督は試合後の会見で、“トンガ・サムライフィフティーン版シピタウ”に込められた想いを、こう語りました。
「最初はみんなで“トンガ代表のシピタウをやろう”という話がありましたが、将来、どこかでトンガ代表と試合をしたいと思っています。そのために、このチームだけのシピタウをつくりました。多くの選手、スタッフが高校、大学など日本で育ったので、内容的にはお世話になった日本への感謝が込められています」
トンガ・サムライフィフティーンを「この日限りのスペシャルチームにしたくない」と言うラトゥ監督。バツベイ選手も「この新しくできたチームを未来につなげていくために続けていきたい。トンガ代表と対戦したい」と抱負を口にしました。
今回のチャリティーマッチを通じて、日本とトンガの絆がこれまで以上に深まったことは間違いありません。友好の絆をさらに強めるためにも、今後、トンガ・サムライフィフティーンとトンガ代表、そしてジャパンの間で定期戦が組まれることを望んで止みません。
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