トップリーグ(TL)は11日にリーグ戦を終了し、17日からはプレーオフトーナメントがスタートします。2組に分かれたリーグ戦では、TL昇降格を繰り返してきたNTTドコモレッドハリケーンズが“赤い旋風”を吹かせました。4勝3敗の成績で強豪ひしめくホワイトカンファレンスの3位に入り、25日のトーナメント初戦(2回戦)に勝てば、シーズン前に掲げていた「トップ8」の目標に到達します。
NTTドコモには今季からニュージーランド代表69キャップのTJペレナラ選手、南アフリカ代表14キャップのマカゾレ・マピンピ選手、ウェールズ代表3キャップのオーウェン・ウィリアムス選手が加わりました。彼ら新戦力の活躍もあり、開幕3連勝。第4節パナソニックワイルドナイツ戦は13対26、第6節ヤマハ発動機ジュビロ戦では21対33で敗れたものの、去年は3対40、7対82で完敗したことを考えれば大健闘です。
リーグ戦最終節の相手は、神戸製鋼コベルコスティーラーズ。神戸製鋼とは昨年2月のTLでは0対97と子供扱いされています。
下沖正博GMの回想。
「終わった直後は、すぐには癒えないほどの深い傷でした。私もスタンドで観ていましたが、“いつ終わるんだろうか……”と思うほどでした。関西圏での試合だったのでメンバー外の選手もスタンドでチームを応援していました。ピッチに出ている選手、スタンドで観ている側にとってもつらい試合でした」
トラウマ級の敗戦から1年。NTTドコモは2018-19シーズン王者の神戸製鋼と大阪・東大阪市花園公園ラグビー場で戦いました。前半開始早々にスタンドオフ川向瑛選手のPGで先制すると、その後は一進一退の攻防が続きました。為す術もなく敗れた1年前とは違い、攻守でアグレッシブな姿勢が目立ちました。前半22分にはペレナラ選手がトライ寸前のところで体を張って相手を止めました。28分にシンビン(10分間の一時退場)で1人少ない状況に陥りながら、34分には川向選手のキックパスからウイングのマピンピ選手がトライを奪ってみせました。
前半は13対14とわずか1点の差。後半に入っても点の取り合いは続き、34分には途中出場のスタンドオフ、マーティ・バンクス選手がPGを決め、29対26と3点を勝ち越しました。
しかし後半ロスタイム、ラストワンプレーで神戸製鋼にトライを許し、29対31で逆転負け。昨年のリベンジは果たせませんでした。
敗れはしたものの、今季から指揮を執るヨハン・アッカーマンヘッドコーチ(HC)は「今日のパフォーマンスを一言でまとめると誇らしい」、ゲームキャプテンを務めたペレナラ選手も「僕もみんなのプレーぶりが誇らしい」と胸を張りました。
極めつけは1年前の神戸製鋼戦にフル出場していたバンクス選手のコメントです。
「僕自身は1年前に苦い思い出があった。今日に関しては最後の最後まで勝っていたし、勝てると思っていた。笛が吹かれた後、去年の結果を踏まえ、“こんなにもチームが変わるのか”と思い、涙が出そうでした」
下沖GMに至っては「目がウルウルときた」そうです。
「試合終盤に点差を見た時、3点差で勝っていました。試合は終わっていませんでしたが、去年の97失点から立ち直り、体を張っている選手たちの姿を見ると、目がウルウルと……。“1年でこれほどチームが変わるのか”と……」
たった1年で0対97が29対31に。成長の要因を下沖GMは「ヨハンの功績が非常に大きい」と語り、こう続けます。
「チームに加わったのが10月。そこからわずか数カ月で、彼は勝つマインドを持つチームにつくりあげた。試合前もヨハンとTJたちが勝つ気で準備をしていた。我々もどれだけチームがやれるのか、期待感が大きかった。チームは好守にアグレッシブな姿勢を見せてくれ、神戸製鋼戦では水際でトライを防ぐケースもありました」
アッカーマンHCは選手たちに常々「努力を惜しまないチームにしたい」と語っています。その前提となっているのがフィジカルとフィットネスです。
「昨年11月、沖縄で合宿を行いました。妥協を許さない雰囲気で、タフな人間をつくりあげるために相当きつい練習をしていましたね。僕もHC時代に厳しい練習を課しましたが、当時を知る選手は“あの時以上にきつい”と。特にFWは去年、セットピースが崩壊気味だった。そこに関しては選手たちが根を上げるぐらいハードな練習を積みました。スクラムを組んだ直後にスプリント練習をする。さらにはレスリング流のトレーニングを入れ、またスクラムを組む。そのスクラムがうまく組めなければ、走らせることもありました。試合を意識したスクラム練習でしたね。モールも同様です。その結果、去年はモールでボコボコ点を取られていた場面で守れるようになった。アタックではモールでトライをとれるチームになった。FW陣は去年失った自信をこの1年で完全に取り戻した感がありますね」(下沖GM)
終盤での踏ん張りこそはハードワークの成果です。NTTドコモは今季7試合中5試合でラスト10分の時間帯に得点を取っています。4勝中3勝が逆転勝ちで、そのうちの2勝がロスタイムでの勝ち越しです。
NTTドコモのCMではありませんが、勝利が「いつか、あたりまえになることを。」――。その日も遠くはなさそうです。
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