トップリーグ時代から続く、ライバル対決は手に汗握る好ゲームとなりました。2月17日、埼玉・熊谷ラグビー場で行われたリーグワン第7節の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)対東京サントリーサンゴリアス(東京SG)戦は、埼玉WKが24対20で勝利し、開幕からの連勝を7に伸ばしました。
トップリーグ時代の優勝回数は、ともに最多タイの5回。2022年にスタートしたリーグワンでは、決勝で初代王座を争いました。
この日の試合を振り返りましょう。前半4分、埼玉WKがスタンドオフ松田力也選手のPGで先制すると、9分、東京SGが逆転します。11分、埼玉WKが再逆転、後半6分には、東京SGがリードを奪い返しました。シーソーゲームに終止符を打ったのは、松田選手でした。21分に勝ち越しのPGを決め、その正確無比なプレースキックで終了間際にも3点を加えました。
試合後の埼玉WKフッカー堀江翔太選手のコメントが振るっていました。
「ピアノの発表会みたいなものなんです。やるべき項目は決まっている。発表会は終わるまでは、失敗しても止まりません。やりながらミスをカバーしながら、アドリブの部分はあるけど、曲目は変わらない。誰かがアドリブをしたら、それに合わせないといけませんが、“ワイルドナイツ”というセットリストは変わらないんです」
音楽好きで知られる堀江選手ですが、まさかピアノの発表会を例に持ち出すとは……。本人によると「親が元々音楽の先生で、ピアノも家でよく流れていた」そうです。そう言えば、彼のプレースタイルは独創的です。“絶対音感”ならぬ“絶対体感”のようなものが備わっている気がしてなりません。幼少期に身に付けたリズムやテンポが血となり肉となっているようです。
では堀江選手の言う「セットリスト」とは、何を意味するのでしょう。
21対20とリードした後の25分、埼玉WKは自陣に押し込まれます。ピンチの芽を摘んだのがスクラムハーフ小山大輝選手。タックルで相手のノックオンを誘いました。さらに30分には、センターのダミアン・デアリエンデ選手が自陣でジャッカルに成功し、危機を逃れました。
締めは試合終了間際です。38分、埼玉WKは敵陣に押し込み、相手のオフサイドを誘発。外に蹴り出し、ラインアウトモールで時間をかけて攻めるという選択肢もありましたが、後半8分にフッカー坂手淳史選手に代わって出場し、ゲームキャプテンを務めた堀江選手は、あえて敵陣中央でのスクラムを選択しました。
このスクラムで相手がニーリングの反則を犯すと、今度はショットに切り替えました。場内に表示されている時計は79分(後半39分)を回っていました。PGはレフリーがショットをコールしてから1分以内に蹴られなければいけません。そのため古瀬健樹レフリーは「80分03(秒)までです」と説明しました。逆に言えば、キッカーの松田選手は試合終了のホーンが鳴るのを待ってから、ボールを蹴ることができるのです。
「そういうクレバーさはラグビーに必要だと思う。勝つことを優先しました」と松田選手は事も無げに語りました。
続いては38分にスクラムを選択した堀江選手のコメントです。
「時間を使いたかったし、スクラムが安定している自信もあった。あとセンタースクラムはディフェンスもしにくい。ラインアウトでの反則も嫌やし、一番時間を使えて自信があるものを選びました。ウチは10番、僕(やキャプテン)が決めたことに対し、全員が頭を全部、そっちに向けられる」
松田選手は、終盤の選択について「全員が同じ絵を見ていた」と表現しましたが、「同じ楽譜」と言い換えることも可能です。堀江選手の“絶対体感”はチーム全体に浸透しているようです。
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