来季、71年ぶり先行開幕決定の“なぜ”。日本ハム新球場は“球界再興”の発信地【二宮清純コラム】

2022年8月12日(金)更新

15:00

来季、71年ぶり先行開幕決定の“なぜ”
日本ハム新球場は“球界再興”の発信地

　来季、NPBでは71年ぶりの先行開幕が決まりました。舞台は来年3月の開業に向けて、目下建設が進んでいる北海道日本ハムの新たな本拠地「ES CON FIELD HOKKAIDO」(北広島市)です。他球場より1日早い3月30日に開幕戦（対戦相手は未定）が行われます。

「12球団の総意」

　NPBと12球団は、8月8日に行われた実行委員会で先行開幕を決定しました。NPBの井原敦事務局長はその経緯を次のように説明しました。「新球場は何十年に一度みたいなもの。12球団の総意として門出を祝うという意味を込めた」。NPB球団の新球場への本拠地移転は、2009年の広島（MAZDA Zoom－Zoomスタジアム広島）以来、14年ぶりです。

　札幌市が所有する現在の本拠地・札幌ドームは、球団によると施設の使用に制約があったほか、負担する賃料も高額でした。その結果、18年に日本ハム本社などが出資する「ファイターズスポーツ＆エンターテイメント」が所有、運営を行う新球場への移転が決まりました。

　メジャーリーグ・レンジャーズの本拠地「グローブライフ・フィールド」なども手掛けた米設計事務所が共同で建設に携わる新球場は、日本初の開閉式屋根付き天然芝球場です。敷地面積は5ヘクタールで、収容人数は3万5000人。芝の育成を促すためのガラス壁のほか、宿泊施設やレストランなども併設した斬新なデザインが特徴的です。

　5月30日には、建設中の新球場を日本ハムの伊藤大海投手や清宮幸太郎選手らが視察しました。昨季、ルーキーイヤーながら10勝（9敗）をあげ、侍ジャパンの一員として東京五輪での金メダル獲得にも貢献した伊藤投手は、「開幕戦（の先発）を狙っていきたいので、そこを目標に今シーズンを戦いたい。観客との距離も近そうなので、ぜひ来年この球場で皆さんにいい姿を見せたい」と抱負を述べました。

　前回の先行開幕は、1952年3月21日に行われたセ・リーグ開幕戦の阪神対名古屋(甲子園)までさかのぼります。フランチャイズ制や、同一カードの連戦が始まったこのシーズン、同20日付の朝日新聞には〈本年度からの新しいやり方が、どのようにファンを引きずって行くか興味深い〉という記述が見られます。阪神対名古屋については〈今節随一の好カード〉と評していました。ちなみに結果は、阪神が4番・藤村富美男さんの2ランなどで4得点を奪うと、投げてもルーキーの三船正俊さんが名古屋打線を完封し、開幕戦白星を飾りました。

　この試合を最後に、プロ野球では70年間、先行開幕は実施されていませんでした。他の競技に目を向けると、サッカーのJリーグとバスケットボールのBリーグが、リーグ旗揚げのシーズン、それぞれリーグ屈指の好カード1試合（Jリーグ＝ヴェルディ川崎対横浜マリノス、Bリーグ＝アルバルク東京対琉球ゴールデンキングス）のみを開幕戦に指定し、メディアやファンの視線を集中させました。

　93年に始まったJリーグで、この先行開幕を断行したのは、初代チェアマンの川淵三郎さんでした。川淵さんは自著の中で、決定の舞台裏を明かしています。