WBC日本代表の4番として期待のかかる村上宗隆選手(熊本・九州学院高―東京ヤクルトスワローズ)が甲子園に出場したのは1年夏の1回だけです。遊学館(石川)に3対5で敗れ、初戦で姿を消しました。
この試合、4番に座った1年生の村上選手は遊学館の小孫竜二投手(東北楽天ゴールデンイーグルス)に4打数0安打に封じられました。つまり、彼は甲子園ではホームランどころか1本もヒットを放っていないのです。
しかし、この悔しさをバネに、バットを徹底して振り込み、高校通算52本塁打を記録しました。“肥後のベーブ・ルース”と呼ばれるほどの猛打が目に留まり、2017年のドラフトで東京ヤクルトから1位指名を受けたのは周知の通りです。
高校の3年間、村上選手の指導に当たったのが坂井宏安監督(当時)です。坂井さんは村上選手に「フライを打て!」と指導しました。
高校野球はゴロを転がせば、何が起こるかわかりません。低い打球を要求する指導者はよくいますが、「フライを打て」という指導者は、あまり聞いたことがありません。
そこで坂井さん本人に質すと、「それは、ちょっと違う」とのことでした。
「僕が言ったのは、フライはフライでも、“高いフライを打て”と……」
そしてこう続けました。
「高いフライ、それも特にセンターから左中間方向ですけれど、そこに大きいフライを打つ。それは球をとらえるバットのポイントがしっかりしているということ。野球では真芯でとらえた打球というのは、意外に飛ばないんですよ。卓球なんかでもラケットか体で工夫して球に回転をかけたりするじゃないですか。あれと同じで打球を飛ばすには、真芯で跳ね返すんじゃなくて、打球が上がって伸びていくには、球に回転を与えてやる必要がある。そういうコツを習得しているのが、長距離バッターだと思うんですよね」
坂井さんによると、「高いフライを打て!」との指示は、あくまでも将来を見越して村上選手に対して出したものであり、他の選手には出していないとのことです。
てっきり、米国で流行している「ハイボール革命」の影響かと思われましたが、坂井さんは、それについても、きっぱりと否定しました。
「あれでアッパースイングに走る子供が多いみたいですが、やはりバッティングはムダなく振ることが大事です。まして最近の甲子園なんて150キロ台のピッチャーがザラにいるんですから、バットが下がってムダがあったら、絶対に差し込まれますね。コンパクトな軌道でバットを振っていく。それを身に付けてなかったら、上のレベルでは通用しない。ちょっと遅い球なら少しバットが下がってムダがあっても打てますが、上に行ったら許されませんよね。それはもちろんプロに行かせるためとかではなく、チームで活躍する選手になってもらうためにやったんですけどね」
村上選手は昨年オフ、岡本和真選手(読売ジャイアンツ)、鈴木誠也選手(シカゴ・カブス)、吉田正尚(ボストン・レッドソックス)と、都内で食事会を開きました。
そこで、どんな会話を交わしたのか定かではありませんが、メンバーから見てメジャーリーグの話題になったことは間違いありません。メジャーリーグを代表するピッチャーの名前も飛び出したことでしょう。
WBCは、メジャーリーグのスカウトにとっては品定めの場でもあります。日本人登録選手として最多となる56ホームランを記録した昨シーズン、球場にはメジャーリーグスカウトの姿がありました。今回のWBCで、村上選手の“株価”は、どれほどの高値をつけるのでしょう。
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