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創刊40周年を迎えるスポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』のバックナンバーから、
球団ごとの名試合、名シーンを書き綴った記事を復刻。2020年シーズンはどんな名勝負がみられるのか。

2007中日 日本一

落合博満 「揺るがなかったオレ流。」

text by Tamaki Abe

2007年 中日 日本一
2007年 中日 日本一icon
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※実際の誌面

落合博満がクライマックスシリーズ、日本シリーズを通して追い求めたのは「早さ」だった。FASTではなくEARLY TIMING、先手、先手。

CS第1ステージの初戦、1回無死で出た荒木雅博を初球から盗塁させた。一種の奇策である。普通なら、こうした作戦は、短い間にそう何度も試みるものではない。「早くから走ってくるぞ」というイメージを植えつけて、相手投手に重圧をかけ、じっくり攻めるというのがむしろ常道である。

ところが落合は、日本シリーズに入っても、この早い仕掛けを使ってきた。しかも2度である。第2戦と第3戦の1回、ともに出塁した荒木が早いカウントから盗塁を決めて見せた。相手の厳重な警戒の中、やすやすと盗塁を成功させた荒木の脚のすばらしさはもちろん称えられる。

早さ、先手に執着する姿勢は、まだまだ例を挙げることができる。たとえば守備位置の移動。ドラゴンズはCS、日本シリーズを通して、相手打者によって大きく守備位置を変えた。それは激しい変更といってよいほどだった。レギュラーシーズンで何度も顔を合わせているセ・リーグのチームなら、打球の傾向はかなり絞ることができるだろう。しかし、交流戦や去年の日本シリーズで対戦しているとはいっても、サンプル数の少ないファイターズ相手、加えて、今年は工藤隆人や小谷野栄一のような新しい打者がいる。その中で、守備位置を動かすのは相当勇気と決断力が要ったはずだ。打たれてはじめて動くという手だってあるのだ。

だが、落合とドラゴンズはあくまでも先に動いて攻撃的守備を全うした。二遊間の荒木と井端弘和はファイターズのゴロをいともやすやすと処埋したが、それは身体能力に加えて、大胆に動く守備位置の的確さがあったからだ。日本シリーズ第5戦は、パーフェクトリレーで勝つという快挙だったが、それが成立したのは4回表の森本稀哲のゴロを横っ飛びで捕球し、すばやく一塁に送球した荒木のファインプレーによるところが大きい。もし荒木が、もう少し一塁よりに深く守備位置を取っていたら、あのゴロに追いつくのはむずかしかったろう。

「できれば2つ、3つで通過したいと思っていました」

落合はCSを5連勝で通過して、日本シリーズ進出を決めたとき、そう話した。

「勝ったり負けたりするのは当然。最後に勝てばいい」

そんなコメントが聞かれるかと思っていた周囲は、その意外な言葉に驚いた。なぜそんなに急ぐのか。

おそらくそこには過去2度の日本シリーズで得た、落合の苦い教訓があっただろう。過去の日本シリーズで、落合が常に口にしたのは「シーズンどおり、ウチの野球をやる」ということだった。投手のローテーションを守り、打線を相手投手にあわせて動かすようなことはせず、レギュラーシーズンと同じような戦い方を守り、それで「審判」を仰ぐ。だが、そのやり方で挑んだ2度のシリーズはついに勝つことができなかった。

そこで選んだのが早さの追求だったのだ。レギュラーシーズンでは動かないような場面で動く。相手の出方を見るよりも先に、自分たちが仕掛ける。そうやって活路を開こう。

最も典型的な例が、抑え投手、岩瀬仁紀の起用法だ。CSでは岩瀬をすべて8回途中から登板させた。シーズン中はよほどのことがない限り9回限定の投手を、4試合もつづけて「イニングまたぎ」で起用したのだ。これだけをとっても、早く動くことへの徹底ぶりがわかる。

日本中が首をひねり、考え込んだシリーズ最終戦の山井大介から岩瀬へのリレー。完全試合を続行中の投手を9回に降板させてリリーフエースを送るという前代未聞の投手起用は、早さ、先手を求めつづけたCS、日本シリーズの集大成だったかもしれない。

ではなぜ、早さにそこまで執着したか。それはレギュラーシーズンでの優勝を逃したことと関係がある。

「強かったというよりも、セントラルリーグで負けたくやしさをぶつけてくれたんだと解釈しています」

シリーズ優勝後、勝因を聞かれて、落合はそう語った。しかし、そのくやしさを誰よりも自覚し、CS、日本シリーズにぶつけたのは落合自身だった。

ウチは優勝チームじゃない。一歩でも遅れを取れば、優勝を逃したレギュラーシーズン最終盤のようなことが起こってしまう。王者なら胸を貸してもよい。だが自分たちは2位で機会を与えられた者なのだ。そんな自覚が落合を、「早く、先に」と駆り立てたのだろう。

山井から岩瀬へのリレーは安全策のようにも見えるが、実はそれほど手堅い策でもない。

「ものすごい重圧だった。人生はじめてです、こんなの」

山井からマウンドを譲られた岩瀬の言葉だが、そうした精神状態と、全然合っていなかった投手が引っ込んで相手が「しめたっ」と感じる危険性、そして、完全試合の一員になれなかった野手の微妙な気持ちの変化などを考え合わせると、決して慎重な作戦とばかりはいい切れない。もし、岩瀬が打ち込まれれば、シリーズ全体に与える影響は、山井が打ち込まれた場合とは比較にならない。

それでも落合は早さを求めた。先手を打ちつづけた。その、意固地なまでの徹底が、最後の勝利をもたらしたのだ。

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2020年シーズンはどんな名勝負が生まれる?

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