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創刊40周年を迎えるスポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』のバックナンバーから、
球団ごとの名試合、名シーンを書き綴った記事を復刻。2020年シーズンはどんな名勝負がみられるのか。

2004西武 日本一

伊東勤vs.落合博満 智謀と意地と。

text by Osamu Nagatani

2004年 西武 日本一
2004年 西武 日本一icon
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※実際の誌面

いつもは無ロでシャイな男が、大きな拳を作り「勝ったぞ!」と雄たけびを上げて精一杯の喜びを表現した。〝オレ流〟の中日・落合博満監督を破って日本一になったのは〝無色〟の西武・伊東勤監督だった。

「私たちは日本一になるための練習をやってきた」というオレ流に対し、西武はプレーオフの一戦一戦を戦い抜くことでたくましさを身につけていった。緊張感に満ちた戦いの中で掴んだ自信が、最後に出た。

「土壇場になっても、負ける気はしない」

そう語るのは2番を打った赤田将吾。

「一戦一戦たくましくなるのがわかった」

土井正博ヘッド兼打撃コーチも、若手の成長を肌で感じていた。そして「自分がプレーしたほうがどんなに楽か」と第6戦以降はベンチでサインを出すこともあった伊東監督。

「選手のひたむきな姿に熱くなった。ともかくナインやスタッフに感謝したい」

と言葉を締めくくった。

7戦に及んだ戦いの中で、落合監督は先手必勝のメンバーを組み、力のあるものから先に先発投手に起用した。そして最後に手詰まりを起こした。逆に伊東監督は、常に一番手を〝抑え〟としてベンチに置いていた。シーズン中のエースを2戦目、シリーズのエースを7戦目に配置し第7戦が一番楽な展開になった」と平然と答えた。

「3度三冠王を獲った落合さんは素晴らしい選手だったかもしれない。でも優勝経験は少ない。僕はシリーズに13回も出ているんです」

応援団に日本一の挨拶をする西武ナインを横目に、落合監督はファンの前に選手を整列させ、深々と頭を下げ、後にこう語った。

「この経験は、選手にもオレにも財産になって明日の中日を作っていくだろう。素材に恵まれた選手に出会えて幸せだよ」

この10日間に及んだ熱戦を振り返ってみると、この二人の一年生監督は、誰も予想できない形で最初の火花を散らしていた。

10月16日、シリーズ第1戦。

熱戦に水を差す49分間の中断は、落合監督の冷静沈着な一言から始まった。

「野球規則では、二塁はタッチプレーになるんじゃないの。併殺は成立しない」

一塁塁審の中村稔は併殺を認め、西武ナインはベンチに戻っていた。しかし主審橘高淳は、打者谷繁元信の捕手ゴロを野田浩輔が掴み、そのまま谷繁にタッチしたとしてアウトを宣告している。明らかに落合監督の抗議は正当で、併殺は成立しない。判定は覆った。

しかし、これでは収まらないのが伊東監督。さらに「ただいま、伊東監督の抗議により中断をしています」という審判団の場内アナウンスがその怒りを増幅させた。

「オレは抗議なんてしていない。審判に説明を求めているだけ。間違いを認めれば試合はやる。退場にするというならば、退場にしてくれて結構。納得できないことはイヤだ」

自らの主張を繰り返し、揺らぐことなく審判に立ち向かった。そのあまりに頑とした態度に、西武の球団代表・星野好男は「放棄試合」を覚悟したという。結局、審判が自らの非を認め、場内アナウンスをした時点で、2死二塁からのプレー再開となった。

落合監督は、野球規則や野球協約を暗記するほどに読み込んでいる。「ルールがすべてだ」という哲学を、冷徹なまでに貫き通した。一方の伊東監督は、これまでも頑固なまでに「筋」を通す生き方をしてきた。どんなに強い権力をもった相手に対しても同じだった。

そんな二人の性格が、シリーズ初戦の誤審をきっかけに早くもぶつかり、双方が自分のスタンスを譲らなかった。台風での試合中止も含めた「荒れ模様」のシリーズ展開を予見させる、そんな出来事だったともいえる。

落合監督と伊東監督。二人の指揮ぶりは、性格と同様に、まさに対照的なものだった。

落合監督は、3度の三冠王を獲得している大選手。あまりにも自分のやり方を貫き通すために、〝オレ流〟と言われ、球界の内外で異端視されつづけていた。それは今季、中日の監督に就任しても同じだった。

監督就任の第一声は、こんなものだった。

「私はオールマイティの選手を求めていません」

つまりは〝オールマイティの三冠王になれる選手は自分だけ〟というのが本音だった。普通の人ならば周りの反感を買うだろう。でも、相手はあの落合である。その話を聞いた井端弘和は、妙に心が和んできた、という。

「お前は守りさえしっかりしていれば認めるよ、と言ってくれている気がしたんです」

これまでの中日の監督は、選手に対して、〝ないものねだり〟の部分が多くあったため、自分自身かなり無理をしていた、と言うのだ。

昨年末に、バントの名人・川相昌弘を巨人から受け入れたのも、その言葉の延長線上にあった。川相は巨人で1度、野球を失いかけた男である。そんな川相が現役続行の意思を固めたとき、落合は川相に声をかけた。

「裸一貫で飛び込んでくるならば、いつでも受け入れるよ」――。

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