2025年12月24日(水)更新

WBC、大谷翔平という名の「聖域」
ロバーツ監督「投げてほしくない」

 指揮官としては悩ましいところでしょう。来年3月に開催する第6回WBCを前に、選手の参加表明が相次いでいます。ロサンゼルス・ドジャースの日本人メジャーリーガーでは、既に大谷翔平選手が自らのSNSで参戦の意思を表明、山本由伸投手も出場が確実視されています。

ドジャース(大谷翔平・山本由伸・佐々木朗希所属)の放送予定はこちら

目指すは「スリーピート」

 さる12月8日(日本時間9日)に行なわれたウインターミーティングで、大谷選手と山本投手の参加表明について聞かれたドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、「彼らが(出場を)熱望していることはわかっているし、日本中が興奮していることもわかっている」とした上で、「その件については(2人と)話し合わなければならない」と慎重な物言いに終始しました。

 大谷選手については、「恐らく打つだけだろう」とDHでの起用を支持しつつ、「彼には投げてほしくない」と本音を吐露しました。

 一方の山本投手に対しては、「どのような制限をかけるか話し合いが必要だ。26年シーズンのことも見据えなければならない」と、奥歯に物がはさまったような口ぶりでした。

 来シーズン、ロバーツ監督率いるドジャースが目指すのは、当然「スリーピート(3連覇)」です。ワールドシリーズ2連覇を飾った直後のロサンゼルス市内での優勝報告会では、盛り上がる観衆に向けて「スリーピート、スリーピート、行くぞ!」と絶叫しました。

 過去、メジャーリーグにおいて、ワールドシリーズで3連覇以上を達成したチームはニューヨーク・ヤンキースとオークランド・アスレチックスだけです。ヤンキースは1936年から39年にかけて4連覇、49年から53年にかけて5連覇、98年から2000年にかけて3連覇を成し遂げています。またアスレチックスは72年から74年にかけて3連覇を達成しています。

 WBCが始まったのは06年からです。当初日本では、「WBC? ボクシングでもやるの?」と訝しがる声が上がったほどです。メキシコシティに本拠を置く「世界ボクシング評議会」のことです。

WBCはキラーコンテンツ

 世界一を決める国・地域別対抗戦とはいっても、たとえばオリンピックを主催する国際オリンピック委員会(IOC)、ワールドカップを主催する国際サッカー連盟(FIFA)が非営利法人で、世界各国・地域に加盟団体を持つのに対し、WBCは、ワールドベースボールクラシックインク(WBCI)というMLB機構とMLB選手会共同で出資した営利法人が主催し、運営にあたっています。

 そのため、最初のうちは、主催国の米国ですら有力選手の不参加が相次ぎました。ある意味、真剣に王座を目指していたのは日本と韓国、そしてキューバくらいだったかもしれません。

 それは、優勝国と準優勝国を見れば明らかです。06年大会=優勝国・日本、準優勝国・キューバ、09年大会=優勝国・日本、準優勝国・韓国。

 WBCの価値が急騰したのは、コロナ明けの前回の23年大会です。日本対米国の決勝戦、舞台はフロリダのローンデポ・パーク。3対2と日本が1点リードして迎えた9回表2死無走者の場面、18.44メートルをはさんでの大谷投手とマイク・トラウト選手の一騎打ちは、まるで宮本武蔵と佐々木小次郎の「巌流島の決闘」を見ているようでした。

 かくしてキラーコンテンツに成長したWBCに目を付けたのが、米国動画配信王手のネットフリックスです。第1回大会の放映権料が10億円(推定)、第5回大会が30億円だったのに対し、なんと今回は150億円を拠出してWBCIと日本における独占放映権契約を結んだのです。

 私に言わせれば、大谷選手はWBCの“中興の祖”とでも言える人物です。WBCの顔であり、軸であり、実質です。ロバーツ監督と言えども「聖域」に足を踏み入れるのは容易ではなさそうです。

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二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

メジャーリーグもプロ野球も。

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