2025年8月27日(水)更新
ロサンゼルス・ドジャースの4年連続地区(ナ・リーグ西)優勝が見えてきました。さる8月24日(現地時間)、ドジャースは敵地ぺコトパークで地区優勝争いを展開するサンディエゴ・パドレスと対戦し、8対2で勝利しました。これによりパドレスと同率首位に並び、優勝マジックを31としました。
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この日、「1番DH」で出場した大谷翔平選手のバットが火を噴いたのは、7対2で迎えた9回表です。1死無走者で打席に入った大谷選手は、この回からマウンドに立った左腕・松井裕樹投手の151キロのストレートを右中間スタンドに叩き込みました。ダメ押しの今季45号は、日米通じて松井投手から奪った初めてのホームランでした。
ダイヤモンドを一周した大谷選手はベンチに戻る前に、わざわざベンチ横最前列に陣取るパドレスファンに近付き、会話をかわして手にタッチをしました。打席のたびにヤジを飛ばしていたファンを睨みつけるのではなく、スキンシップまで図ろうとする姿に、「ショーヘイの人間性」(ドジャース、デーブ・ロバーツ監督)が表れていました。
ところで、メジャーリーグにおける日本人対決でのホームランは、次の通りです。
2004年6月19日 松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース) 野茂英雄(ドジャース)から3ラン
2005年6月17日 イチロー(シアトル・マリナーズ) 石井一久(ニューヨーク・メッツ)から3ラン
2007年5月4日 城島健司(マリナーズ) 井川慶(ヤンキース)からソロ
2008年7月19日 イチロー(マリナーズ) 小林雅英(クリーブランド・インディアンス)から2ラン
2008年9月15日 岩村明憲(タンパベイ・レイズ) 松坂大輔(ボストン・レッドソックス)からソロ
2009年7月8日 福留孝介(シカゴ・カブス) 川上憲伸(アトランタ・ブレーブス)からソロ
2019年6月8日 大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス) 菊池雄星(マリナーズ)からソロ
2019年6月11日 大谷翔平(エンゼルス) 前田健太(ドジャース)からソロ
2021年6月5日 大谷翔平(エンゼルス) 菊池雄星(マリナーズ)からソロ
2023年4月9日 大谷翔平(エンゼルス) 菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)から2ラン
2023年5月2日 吉田正尚(レッドソックス) 菊池雄星(ブルージェイズ)からソロ
2025年5月25日 大谷翔平(ドジャース) 千賀滉大(メッツ)からソロ
2025年8月24日 大谷翔平(ドジャース) 松井裕樹(パドレス)からソロ
計13本のうち、実に6本を大谷選手がマークしています。内訳は花巻東(岩手)の先輩・菊池雄星投手から3本、前田健太投手から1本、千賀滉大投手から1本、松井裕樹投手から1本です。6本のうち4本が左投手から放ったものです。
大谷選手は、なぜか菊池投手とは相性がよく、MLBでの対戦成績は26打数9安打で打率3割4分6厘、3本塁打、6打点。もっとも菊池投手もやられっぱなしではありません。三振を7つも奪っています。四球はわずかに1つ。
これまでの対戦成績と、その内容を見る限り、MLBという野球の最高の舞台で、互いに斬るか斬られるかの勝負を演じていることが窺えます。18.44メートルの距離を置いて、2人にしかわからない“無言の会話”をかわしているのでしょう。
さて、日本人で初めて日本人打者にホームランを喫した投手は、ドジャース時代の野茂英雄さんです。この時、野茂さんは背番号「10」を付けていました。1995年にドジャースに入団した時は「16」でしたが、その後、メッツ、ミルウォーキー・ブルワーズ、デトロイト・タイガース、レッドソックスと渡り歩き、02年にドジャースに戻った時には、過去で最も若い背番号になっていました。
04年6月19日、ドジャースは本拠地での交流戦でヤンキースと対戦しました。1回の第1打席です。2死一、二塁で打席に立った6番の松井秀喜さんは、野茂さんの外角低目、ボール気味のフォークボールを泳ぎながらもライトポール際に運びました。
しかし、第2打席、第3打席は、いずれも空振り三振。マウンドで先輩の意地を示した野茂さんは、5回にはレフトを守る松井さんの頭上を越えるMLB通算4号を見舞いました。
この先も、MLBでの日本人対決は、大谷選手を中心に展開していくことでしょう。できれば、07年の松坂大輔さん(レッドソックス)と松井稼頭央さん(コロラド・ロッキーズ)以来となるワールドシリーズでの投打の日本人対決が見たいものです。
二宮清純
1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。