ドジャースの大谷翔平選手が止まりません。現地時間5月19日現在、打率3割5分3厘、13本塁打、33打点と三冠王を狙える位置につけています。打率はリーグトップ、ホームラン数も1位、打点は6位タイです。今回は視点を変え、大谷選手のもうひとつの魅力である「足」にフォーカスしてみたいと思います。

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開幕でいきなり二盗

　13日、敵地オラクルパークでのジャイアンツ戦です。1対3の3回表1死一塁で打席に立った大谷選手はジョーダン・ヒックス投手に二塁ゴロに打ち取られてしまいました。一塁走者のムーキー・ベッツ選手は二塁封殺となりましたが、併殺崩れで大谷選手は一塁に生きます。

　続くフレディ・フリーマン選手の打席で、大谷選手は二盗を試みようとしますが、ヒックス投手はまだ投げておらず、一塁に送球します。大谷選手、やや勇み足だったようです。

　ところが、ここで大谷選手の俊足が生きます。飛び出した大谷選手、一塁への帰塁を諦め、大きなストライドで二塁に向かいます。慌てたラモント・ウェード一塁手の二塁送球が右肩を直撃、大谷選手は三塁に達しました。一度は盗塁失敗と記録されましたが、2日後に記録が訂正され、今シーズンは成功率100％をキープしています。

　大谷選手のここまでの盗塁数11はチームトップで、リーグでも6位タイです。デイブ・ロバーツ監督は「ショーヘイは2アウトからでも点の取れる選手」と絶賛していました。2死からでもヒットか四球で出塁すれば、すぐに二盗し、ワンヒットで本塁に還ってくる――。まさにパワーとスピードの“二刀流”です。

　名門ドジャースで、一番最初にホームランを打った日本人選手は誰か。これは前回書きましたが、野茂英雄投手です。ピッチャーながら野茂さんは、通算で4本のホームラン（いずれもドジャース）を放っています。

　では、ドジャースで最初に盗塁を決めた日本人選手は誰か。実は大谷選手なのです。

　3月20日、ソウルでのパドレスとのメジャーリーグ開幕戦。3回の第2打席でダルビッシュ有投手から、記念すべき移籍後初ヒットを放った大谷選手は、続くフレディ・フリーマン選手の初球に二盗を決めたのです。

7割超えの成功率

　開幕前、ロバーツ監督は「バッターに専念する今季は40-40（40盗塁・40本塁打）も達成できるよ」と語っていましたが、それを実現しそうな幸先のいいスタートでした。

　DHに専念する今シーズン、大谷選手は開幕前からバットだけではなく、足でもチームに貢献したい、という思いを強くにじませていました。

　キャンプ地のグレンデール（アリゾナ州）では、ロン・レニキーGM特別補佐から、盗塁や走塁に関する技術や知見を吸収していました。

　ブルワーズやレッドソックスで監督を務めたことのあるレニキーGM特別補佐は、監督への登龍門と言われる三塁コーチで名を成した人物で、盗塁や走塁に関しては一家言持っています。

　キャンプ地でインタビューに答えたレニキーGM特別補佐、「もし6対0で勝っていて、彼（大谷）の後ろにいい打者がいたら、盗塁する理由はありません」と断った上で、「しかし、1点差のクロスゲームや、ここで1点が欲しい場面では彼の盗塁が必要になる」と話していました。

　盗塁の個数もさることながら、目を引くのは高い成功率です。今シーズンは11回企図して11回成功ですから、ここまで10割。メジャーリーグでは、これまで130回企図し、成功したのが97回、失敗は33回。成功率は7割4分6厘。一般的に盗塁成功率の、損益分岐点は7割だと言われています。それを踏まえれば、大谷選手の盗塁は、チームにかなりの利益をもたらせているように思われます。打席のみならず、塁に出ても目の離せない大谷選手です。

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