2026年9月7日(月)更新
20回目の「フレンズ・オン・アイス」
荒川静香「未来につながればいいな」
2006年トリノ冬季五輪フィギュアスケート女子シングル金メダリスト・荒川静香さんのプロデュースによる「フレンズ・オン・アイス2026」が、8月28日から30日(毎回2公演)の3日間、KOSÉ新横浜スケートセンターで開催されました。フレンズ・オン・アイスは、今年で記念すべき20周年を迎えました。
「新しい世界を見たい」
フレンズ・オン・アイスとは、荒川さんが五輪で金メダルを獲った3カ月後の2006年5月から、コロナ禍の2020年を除き毎年、新横浜で開催されています。多くのプロスケーターや競技会に出場する選手に加え、「子どもたちに夢や希望を与えたい」という荒川さんの考えのもと、キッズスケーターたちも数多く出演します。
この6月、荒川さんにアイスショーについて聞く機会がありました。自身が「アイスショーに出演したことで、競い合っていたスケーター同士が1つの作品を一緒につくり上げる素晴らしさに気が付いた」ことをきっかけとして、フレンズ・オン・アイスはスタートしました。
「勝って満足していたらおそらく、いまはもう滑っていないと思います。いまもスケートを続けているのは、人と一緒に物事を創り上げるのが好きだから。“新しい世界を見たい、創り上げたい”という欲求を満たしてくれるのがフィギュアスケートの魅力の1つだと思っています。(アイスショーは)競技会でのキャリアがないと声をかけてもらいない厳しい世界です。競技者の晩年は、アイスショーの世界に行くためにキャリアを積み上げたい、という思いでフィギュアスケートに打ち込んでいました」
当初、フレンズ・オン・アイスは「一夜限りのショーの予定だった」と言います。
「その次の年もやらないか? と(主催者が)言ってくださった。常にいただいたチャンスには全力を注いできた。その積み重ねの結果、20年続けることができて私自身、驚いています。
荒川さんは公演前の8月27日、公開リハーサル後の囲み会見でグループナンバーの「A Million Deams」への思いを、こう述べていました。
「子どもが夢を追っていった先に、一緒に描ける世界を作りたいと思いました。スケートが楽しい、と子どもに感じてもらい、モチベーション向上につなげてもらい、未来につながればいいな、と」
本郷理華の立場
さらには、演出についても。
「(本郷)理華ちゃんは、このフレンズ・オン・アイスに子どもの頃も出てくれました。
その理華ちゃんが、今度は子どもたちの背中を押す番になった。彼女はプロとなり自分の力でアイスショーのオファーを取ってきている。厳しい世界の中で今、いろいろなショーで活躍しているスケーターに成長しています。すごく夢があるな、と思い、あの振り付けになりました」
今回、目を引いたのは、4番目に披露された「A Million Deams」でした。メンバーは荒川さん、2002年ソルトレイクシティ冬季五輪4位でこれまでのフレンズ・オン・アイス全てに出演(20回)している本田武史さん、2010年バンクーバー冬季五輪銅メダリストで同18回出演の高橋大輔さん、2015、16年四大陸選手権3位で同11回の本郷理華さん。そして、キッズスケーターの計5名がリンクに立ちました。ちなみに本郷さんは9歳の頃、第1回のフレンズ・オン・アイスにキッズスケーターとして出演しました。
曲が始まるとキッズ(公演ごとに男子、女子が入れ替わる)がひとりで滑り出しました。そこに本郷さん、本田さん、高橋さんがリンクイン。本郷さんがキッズの背中をそっと押しました。すると、キッズは両手を大きく広げ、力強いスケーティングを披露しました。遅れて登場した荒川さんは、スポットライトを浴びながらジャンプを跳ぶキッズを優しく見守りました。
荒川さんは、9歳の頃を知る本郷さんに大切なショーの一部を託しました。29歳になった本郷さんは、キッズの背中を押す立場になりました。20年の歳月の重みがショーに情趣をもたらしていました。
(取材/大木雄貴、構成/二宮清純)

二宮清純





