21歳の「天才ジャンパー」佐藤駿
五輪表彰台を見据えてファイナルへ

　フィギュアスケート・グランプリ（GP）シリーズ2025は、フィンランド・ヘルシンキで行なわれる最終戦（11月22日、23日）を残すのみ。シリーズ最後の戦いを前に、愛知・GIアリーナで開催されるGPファイナル（12月4日～7日）進出を決めた1人が、今回紹介する佐藤駿選手（エームサービス／明治大学）です。

憧れは羽生結弦

　まずは佐藤選手の経歴について。2004年2月、宮城県仙台市生まれの21歳です。5歳の頃、アイスリンク仙台でスケートを始めました。憧れのフィギュアスケーターは、地元の大先輩・羽生結弦選手。佐藤選手は幼稚園時代、羽生選手からペンダントをプレゼントされ、今でも大切に保管しているといいます。中学3年の春に、父親の転勤に伴い埼玉県へと引っ越しました。

　佐藤選手は5種類（ルッツ、フリップ、トーループ、ループ、サルコウ）の4回転ジャンプを跳びます。一番の武器はアクセルの次に難易度が高いルッツ。彼は19年11月、日本人2人目となる4回転ルッツを成功させました。現在、競技会に出場する日本勢で4回転ルッツを跳べるのは、彼ひとり。ちなみに、日本人で初めて4回転ルッツを成功させたのは、羽生選手です。

　佐藤選手は複数の4回転を跳ぶことから「天才ジャンパー」の異名をとります。2024－25年シーズンは、世界選手権男子シングルの日本代表に初選出され、6位と健闘。来年2月に行なわれるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の代表候補選手です。

　だが好事魔多し。今年6月末のアイスショーで右足首を負傷（診断結果は骨挫傷）しました。ジャンプ練習を再開したのは8月の中頃。それでも、得意のジャンプは健在でした。圧巻の演技を見せたのはGPシリーズ第2戦・中国杯。今年は連覇をかけての演技でした。

　10月24日、重慶でのショートプログラム（SP）。表題曲は「ラヴェンダーの咲く庭で」。ラヴェンダーを想起させる紫の衣装にはスパンコールが散りばめられていました。

連覇達成でも反省

　右足首に不安を抱える中、冒頭の4回転ルッツを佐藤選手は、軸を体幹に集めた素早い回転で見事に着氷すると勢いに乗りました。4回転－3回転のトーループ、3回転アクセルも成功。曲のテンポが上がるとステップ、足替えのコンビネーションスピンなども披露し、右手を掲げるフィニッシュポーズ。目立ったミスもなく、94.13点で首位発進しました。

　迎えた翌日のフリースケーティング（フリー）。プログラムは「火の鳥」。黒を基調としたシャツに赤、金、銀のラメ入りの衣装に身を包み、演技スタート。ブレのない4回転ルッツを皮切りに、3回転アクセル－オイラー－3回転サルコウのコンビネーションジャンプ、4回転トーループ、3回転－2回転の連続アクセルジャンプを次々と成功させました。

　予定していたジャンプを全て成功させるとステップシークエンスに入り、演技はフィナーレへ。コンビネーションスピンで締めると、両手で大きくガッツポーズ。ノーミス演技は、183.99点。得意の4回転ルッツをはじめ、全てのジャンプに加点がつきました。SPとの合計を278.12点とし、連覇を達成しました。

　フラッシュインタビューで佐藤選手は、こう語りました。

「苦しい中での試合で不安もありましたが、声援や拍手が力になりました。中国は大好きでまた来ることができてうれしかった。連覇できてうれしいです」

　佐藤選手は大阪府で行なわれたNHK杯（11月7日～9日）でも安定した演技で銀メダル。この結果、フィンランド杯（11月22日、23日）に出場する他の選手の結果を待たずして、GPファイナル（愛知県・GIアリーナ、12月4日～7日）の出場権を手にしました。

「スピンとステップのレベルの取りこぼしが、何点かありました。少し時間があるので、そこの部分をしっかり詰めて練習をしていきたい」

　そう語る佐藤選手は、GPファイナルの先にミラノを見据えています。