2023年12月18日(月)更新
仙台を「フィギュアの聖地」に!
民設公営の新スケートリンク誕生
仙台市は11月28日、スポーツ用品店大手のゼビオホールディングスと提携し、ゼビオアリーナ仙台に通年で滑走できるアイススケートリンクを新設すると発表しました。新スケートリンクのサイズは縦30m×横60m。県内初となる国際規格を充たす通年スケートリンクの誕生です。2024年度中に大規模改修工事に着手し、2025年度の利用開始を予定しています。
ゼビオHDと提携
施設の改修工事費用はゼビオHDが負担します。改修後にはアリーナを仙台市に寄付します。企業は行政に施設を寄付することで固定資産税などが一部、免除されます。行政にとっては多額の建設費を抑えられるのが、民設公営の最大のメリットです。
<市は、施設の光熱水費や人件費に充てる指定管理料を20年間で70億円と試算する。スケートリンクを新設した場合、整備費が60~100億円、運営費が年間2億~3億円かかるとみられ、市は財政的な負担を減らせると判断した。>(河北新報 2023年11月29日付)
仙台市とゼビオHDによる締結式に、同市出身のプロフィギュアスケーター・羽生結弦選手は、次のようなビデオメッセージを寄せました。
「これまでも多くのフィギュアスケーターが育ってきましたが、練習環境はとても厳しい状況にあります。自分と同じようにこの町でフィギュアスケートをやりたいと思う次の世代が1人でも多く生まれることを期待しております」
宮城県内の通年リンクは羽生選手が練習拠点にしているアイスリンク仙台のみ。しかし、ここは縦26m×横56mのサイズで国際規格を充たしません。大和町にあるベルサンピアみやぎ泉は国際規格を充たしますが、冬季のみの営業のため通年では使用できません。
ゼビオアリーナ仙台内に新設されるスケートリンクは、一般には開放されません。主にスケート大会やアイスショー、アスリートの通年練習用リンクとして使用される予定です。同アリーナはBリーグ(1部)・仙台89ERSの本拠地でもあります。
参考までに、青森県八戸市にあるFLAT HACHINOHE(フラット八戸)の例を紹介しましょう。ここは日本で初となるスケートリンクをベースとするアリーナで、移動式断熱フロアを敷設しています。加えてBリーグ(2部)青森ワッツの本拠地でもあります。ちなみに、羽生選手のプロ転向後初となるアイスショー「プロローグ」八戸公演は、2022年12月1日から3日にかけ、ここで開催されました。
フィギュア発祥の地
フラット八戸の建築主であり、管理・運営を行っているのはクロススポーツマーケティング。この会社はゼビオHDの子会社です。ノウハウの共有は容易でしょう。
八戸市は1930年に第1回全日本スピードスケート選手権大会を、1947年には第1回冬季国民大会を開催しました。以前、フラット八戸について取材をした際、同市まちづくり文化スポーツ部次長兼スポーツ振興課の課長からこんな話を聞きました。
「昔、八戸城の周りに水田があり、水を供給するための溜池が7つ設けられていた。地元では、その溜池を堤と呼ぶんです。稲刈りが終わり、冬が訪れると堤が氷に覆われてしまう。いつしか、その氷の上で子どもたちが遊ぶようになり、1907年1月には、凍った溜池の上で氷上運動会が行われたという記録も残っています。これが八戸での最初の氷上運動会だと言われています」
新設される仙台のアリーナに戻しましょう。締結式で郡和子仙台市長はこう述べました。
「日本フィギュアスケート発祥の地である仙台に、国際規格に適合する通年型のアイスリンクが整備される大きな一歩となります。整備の実現に向けまして、官民手を携えてしっかりと取り組んでまいりたいと思います」
仙台市の青葉城跡入口には五色沼という小さい沼があります。ここは日本フィギュアスケート発祥の地として知られています。明治中期に外国人たちがこの場所でスケートをはじめ、明治42年頃に第二高校(現・東北大学)の生徒がドイツ語講師ウィルヘル氏からフィギュアスケートの指導を受けたと言われています。
仙台市とゼビオHDによるアイススケートリンク新設計画は“フィギュアスケート聖地化計画”の一環と言えるかもしれません。
二宮清純