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監督&キャスト
インタビュー

監督 上田慎一郎インタビュー

上田慎一郎
――現時点(※取材日10月23日)でもブームは冷めやらずといった状況です。この成功をいまどう受け止めているでしょうか?

6月から公開はスタートしたのですが、最初は2館で3週間で終わる予定で。まあ7月いっぱい、頑張って8月ぐらいまで公開が続けばなと思っていました。それがうれしことに8月になっても、9月になっても、そして10月のいまも続いて。周囲からは「すごい成功ですね」とか言われるんですけど、自分としては今日のような取材を受けたり、ラジオやテレビに出演させていただいたり、最近ではリピーター向けのネタバレOKイベントも増えたりと、とにかく慌ただしい。嵐のような日々がまだまだ続いている状況で、成功を実感する暇もないというか。そのことを確かめたりする余裕もないというのが正直なところです。

――どのあたりで映画が多くの人に届きそうだと感じましたか?

作品の手応えは関係者試写をした時に感じました。普通は関係者試写というのは盛り上がらない。みんな関係者ですから脚本も知った上で見ているし、出演者も実際に出ているわけだから、客観的に見るから盛り上がることなんてないわけです。でも、『カメ止め』は、もう上映中からなんか大盛り上がりで。その瞬間に、これはいけるんじゃないかと。ただ、実際は蓋を開けてみないとわからない。それで公開を迎えたんですけど、1週目はインディーズ系映画のファンがほとんど。それが2週目、3週目からどんどん若者や女性が増えてきて、満席になるスピードもどんどん上がってきて、最後はもう入れない入れない状態のチケットの売れ行きになった。毎日劇場に足を運んでいたので、その状況も観客のみなさんの熱も直でみていたので、そのとき、これはちょっと遠くまで羽ばたけそうだなと思いました。あと、そのころから『カメ止め』のTシャツを来ている人とふいにすれ違ったり、道端に落ちている『カメ止め』のチケットの半券を発見したりと、自分の日常というか生活の中にふいに『カメ止め』が現れて。そのときに、「えらいことになってきたな」というのはありましたね。

上田慎一郎
――その中で、大きな話題となったのは37分のワンシーンワンカットの長回し。このある意味、無謀なチャレンジに踏み切れた理由は?

ひと言で言えば、無謀だからこそ踏み切れました。30分ぐらいの会話劇ならワンシーンワンカットで撮れそうですけど、血が噴き出したり、首が飛んだり、腕が引きちぎられたりするゾンビサバイバルはそうはいかない。入念な段取りも必要だし、そうとうハードルが高い。しかも、それをまだ経験の乏しい俳優たちとスタッフでやる。周囲から言われました。「無謀すぎる、絶対に無理」だって。「30分ワンシーンワンカットのゾンビサバイバルをこの予算、この日数、このメンバーでとるなんて無茶にもほどがある。やめとけ」と。でも、それが逆に自分の心に火をつけた。昔からそうなんですけど、無謀だと言われることこそやらないとと思う性格で(笑)。そういう挑戦がないと燃えてこないタイプ。自分たちが到達できるかどうかわからないところにチャレンジしないと気が済まない性分なんです。
出来るとわかることをやるのは、どこか流れ作業になってしまう危険が多分にある。そうなるとやはり無難に収まるというか。予定調和で終わるんです。できるかわからないけど挑戦することで、人の心を動かすなにかが出てくるんです。常にそうなんですけど『カメ止め』でも、なにか無謀なこと、不可能なことにスタッフもキャストもトライすることで出てくる、フィクションとドキュメントがないまぜになった本物の二度とない瞬間を生み出したかったんです。

――演じる役者陣はどう受け止めていたのでしょう?失敗の許されず、緊張を強いられたのではと想像するのですが?

どれぐらい無謀なのか、あんまりわかっていなかったかもしれません。というのも、37分のワンカットだけではなくて、この脚本の文字だけ追っても、どういう映画になるのか想像がつかなかった人が多かったと思うんですよ。映画になってしまうと、きわめてシンプルなんですけど、文字だけだと、この人は最終的にはこうなるとか、この伏線はこう回収するとか、うまく整理できない。構造が入り組んでいて、よくわからなかったと思うんです。でも、「これできるのか」という空気はなんとなくありましたね。ただ、やると決まったら、もうみんな迷いは消えたというか。そこからはもう「やったる」みたいに無謀な挑戦を楽しみはじめてくれましたね。

上田慎一郎
――この挑戦で1番の難しかったところは?

例えば会話劇だったらテンポが崩れたりするとそれだけでアウト。でも、基本はゾンビサバイバルで廃墟を走り回るアクションが主体なので、変な話、多少の粗は許される。その中で1番難しかったのは、ちょうどいいあんばいに収めることですかね。この長回しは、後半と対になっているので、完璧にうまくいきすぎても、逆にミスだらけでもダメ。たとえば6テイクをこのワンカットは重ねたんですけど、5テイク目はほんとうに完璧で。何の問題もなくスムースに最後まで撮り終えました。でも、完璧すぎてそつなく成立してしまって、逆になんも面白味もなくなっちゃったんです。
選択した6テイク目は、血がカメラについちゃったり、ゾンビメイクが遅れてガチで役者がアドリブで時間をつないでいたりとか、ミスやトラブル、ハプニングが随所にあったんですけど、それがライブ感や緊迫感を生み、2度とない瞬間になっていた。
あと、もうひとつ言うと、このカットは、ゾンビ映画として出来過ぎていても、ショボ過ぎてもダメ。対になる後半で爆発を起こすためには、「まあまあ見れる」ぐらいがベストで。ただ、これは狙ってできることではない。入念に固めて固めて撮影には入るんですけど、そこで無難に収まらず、壊れることを望みながら、壊れすぎてもダメだし、ちょっと壊れたぐらいではおもしろくない。こんな針の穴に糸を通すようなことを狙っていたんです。
この長回しは、すべてにおいていいあんばいに収める。それが大きな課題で、そういう脚本にするのも難しかったし、そういう作りにするのも難しかった。でも、スタッフもキャストも力を結集させてくれて、もうこれ以上ないシーンになったと思っています。

――では、映画製作全体で1番苦労したことは?

たくさんありすぎる(苦笑)。でも1番は、脚本ですかね。ワークショップを経て12人のキャストを選抜して、彼らをもともと構想のあった『カメ止め』の骨組みの中に放り込み、全員に見せ場があり、それが物語的にも必然性があり、12人の個性が際立ち、すべての人物が短い中でそれぞれに成長を遂げる。これらすべてを成立させる。この脚本作りがいままでにない大変さでした。

――「低予算映画でも、キャストが知られていなくてもこんなに面白い映画が撮れることを証明した」なんて声が多くきかれますが、これについてはどう感じていますか?

傍から見たらそう映るんでしょうけど、当事者の僕としてはちょっと違うというか。低予算「でも」、まだあまり知られていないスタッフとキャスト「でも」ではなく、低予算「だから」、まだあまり知られていないスタッフとキャスト「だから」、おもしろくなった映画だと思うんですね。「でも」と「だから」のちょっとした違いかもしれないですけど、そこには大きな違いがある。
予算がない中で、手作りで作ったこと。たとえば血だらけのシャツとか衣装は僕が作ってしますし、自分の息子を出したりしている。ほんとうに使えるものは全部使い切った。『カメとめ』は限りなくハンドメイドで作った映画。その手作り感がこの映画のチャーミングさにつながっていると思う。予算があったらそれはなくなっていたかもしれない。有名な俳優さんが出ていたら、肝心の展開とか読めてしまったかもしれない。予算があって有名な俳優さんが出ていればいいわけではない。予算に限りがあることで生まれる創意工夫もあるし、さほどキャリアのない役者だからこそ挑戦できることもある。予算が潤沢で、有名な俳優さんたちがいっぱい出ていたら、同じ脚本でも同じ映画にはならなかったはず。それがここまで人々に届く映画になったかはわかりません。

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