泉秀樹の歴史を歩く

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明智光秀の野望【2018年12月】

本能寺の変。歴史の流れを変える偉大な天才・信長を明智光秀は暗殺した。しかし光秀は挫折し「三日天下」に終わった。
光秀はなぜ失敗し天下人になれなかったのか。遠い昔と今を結ぶ線を辿る。作家・泉秀樹が歴史の現場を取材し独自の視線で人と事件をプロファイルする!

登場人物プロフィール

明智光秀

明智光秀

戦国・安土桃山時代の武将。通称十兵衛。足利義昭擁立に関与。信長旗下で活躍、惟任日向守(これとうひゅうがのかみ)となる。
本能寺で信長を急襲するが、中国大返しと呼ばれるあまりに早い行軍で引き返してきた秀吉との山崎の合戦で敗走した。途中、住民に竹槍で刺殺された。

第1章 光秀が信長に仕えるまで

織田信長像(JR東海道本線・安土駅前)

織田信長像(JR東海道本線・安土駅前)

明智光秀は青年時代に各国を放浪したといわれる。北陸経由で上杉の越後、芦名の会津、かつて藤原が勢力を持っていた奥州、さらに南部の盛岡から佐竹の常陸、そして武蔵、北条の小田原、武田の甲州、今川の駿河と渡り歩き、それぞれの地勢、城郭、民政や人々の暮らしなどを詳細に探索したという。落ちぶれて放浪したのは、弘治2年(1556)美濃・井の口(岐阜市)の斉藤義龍によって明智城(岐阜県可児市明智)を攻略されたからだ。
一歩々々努力を重ねた光秀は、朝倉氏を頼って越前の一乗谷城(福井県)にいた室町幕府・前将軍の弟・足利義昭に接するようになり、義昭から信長との連絡・連携策を依頼された。しかし、義昭と信長が対立すると、光秀は信長につき、ついには信長に召し抱えられた。このとき光秀は41歳、信長は35歳である。

第2章  信長から高く評価されていた光秀

明智光秀像(坂本城址・ 滋賀県大津市)

明智光秀像(坂本城址・ 滋賀県大津市)

元亀2年(1571)9月、信長は比叡山を焼き討ちにして僧侶や女子供まで2,000余を殺したが、光秀は凄まじい殺戮作戦を展開した。そして信長は光秀に近江・坂本(滋賀県大津市)をあたえた。坂本は南近江のきわめて重要な要衝で、それだけ信長は光秀を深く信頼していたということである。
光秀は比叡山焼き討ち直後から坂本城(大津市下阪本)の築城にとりかかり、高層の大天主と小天主を中心に置いた、目を見張るような巨大な城塞を完成させた。さらに丹波攻略にも成功し、信長はそのまま光秀に丹波をあたえた。徹底した能力主義者であった信長は光秀を取り立て、その出世の早さは異例だった。
「(光秀は)名誉の大将也。弓取は煎じての飲むべき候事」
武士たる者は光秀を見習って爪の垢を煎じて飲むべきだ、とまで褒めあげている。そこまで自分を高く評価している信長を、光秀は、殺そうと考えていた。

第3章 裏切りの行軍

本能寺跡(京都市中京区)

本能寺跡(京都市中京区)

本能寺の変の4日前、天正10年(1582)5月29日。
会は参籠した威徳院で催され、西ノ坊の行祐や連歌師・里村紹巴(じょうは)などが招かれていた。
『時は今あめが下しる五月かな』
咲庵の号を持つ光秀の作で、紹巴はのちに美濃の土岐氏の末裔といわれる光秀がみずからを「時」とし、「あめが下しる」は「天下を治める」の暗喩(あんゆ)であると解釈した。
本能寺の変の前日、天正10年(1582)6月1日 甲の刻(夕方4時)。
光秀が物頭を集合させて出発を命令した。信長が陣立(じんだて)(武者揃え)の様子を見たいといっているから出動すると触れさせ、一刻(2時間)後には亀岡の東の郊外に兵を集結し、そして、篠村八幡宮(亀岡市篠町)で5人の宿老に信長暗殺を告げた。女婿(従弟)の明智秀満をはじめとする明智光忠、藤田伝五、斎藤利三、溝尾勝兵衛の五名である。

第4章 本能寺の変と三日天下

明智藪(明智光秀終焉の地・ 京都市伏見区)

明智藪(明智光秀終焉の地・ 京都市伏見区)

京都に到着すると未明には、光秀軍が本能寺を包囲し終えた。一斉に鉄砲を撃ちかけた光秀軍は木戸を破り、あるいは築地や土塁を越えて本能寺に雪崩れ込んだ。その銃声や怒号を耳にした信長は、家中の者同士の喧嘩か、と思ったが、光秀謀反と知ると「是非に及ばず」といった。
信長は森蘭丸以下近習とともに広縁に出て「初めには、御弓を取り合ひ、2、3つ遊ばし候へば、何れも時刻到来候(そうろう)て、御弓の絃(つる)切れ、其の後、御鎗にて御戦ひなされ、御肘に鎗疵(やりきず)を被り、引き退き、是れまで御そばに女どもつきそひて居り申し候を、女はくるしからず、急ぎ罷(まか)り出でよと、仰せられ、追ひ出させられ、既に御殿に火を懸け、焼け来たり候。御姿を御見せあるまじきと、おぼしめされ候か。殿中深入り給ひ、内よりも御南戸(納戸)の口を引き立て、無情に御腹めされ」(『信長公記』)という。

地図

  • 光秀死亡地(クリックすると拡大)光秀死亡地(クリックすると拡大)
  • 光秀死亡地光秀死亡地
  • 秀吉の中国大返し(クリックすると拡大)秀吉の中国大返し(クリックすると拡大)
  • 秀吉の中国大返し秀吉の中国大返し

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