王朝時代からフランス革命へ。激動の時代をドラマチックに描いた少女コミック『ベルサイユのばら』。その人気はコミックのみならずアニメ、舞台など様々な形で今なお愛され続けている。女性チャンネル♪LaLaTVでは、そんな『ベルサイユのばら』を6月、7月にかけて特集放送。そこで今回は、放送予定の番組から2006年に上演された宝塚歌劇・星組「ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-」に出演した湖月わたる、白羽ゆりに、当時の思い出をたっぷりと語ってもらった。
――『ベルサイユのばら』という作品は、お二人にとってどのような作品なのでしょうか。
- 湖月
-
実は、私は1年目の時にも出させていただいていて、街を逃げ回る市民の役でしたが、その時でも『ベルサイユのばら』という作品がお客様にとっても、関係者にとってもとても大切な作品なんだと強く感じました。その後、アンドレとして出演した時にもそれは感じましたね。そういう宝塚歌劇の代表作に主演として立たせていただけることは本当に光栄なことだな、と。そして、今の『ベルサイユのばら』を私たちが作っていきたいと思いましたね。初演の出演者の方がお稽古場にもいらしてくださったこともあって、いろいろな思いがある中で、今の私たちが血と肉をつけていく。大変でもありましたが、やりがいもすごくありました。
- 白羽
-
私は『ベルサイユのばら』に憧れたことが、宝塚歌劇に入るきっかけでした。その初めて観た『ベルサイユのばら』は、わたるさんが街を逃げ回って出演されていたものです(笑)。テレビで見てアントワネットの輪っかのドレスに、すごく憧れたんです。女の子ってドレスへの憧れがあると思うんですが、私もそういう気持ちから宝塚の世界を知りました。そして受験して、入団して、わたるさんの相手役になって…、アントワネットを演じることになって。本当に夢って叶うんだなと思いました。
――今回放送される『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』のお稽古で思い出に残っていることはありますか?
- 白羽
-
お稽古に入って演出家の先生に"勉強しすぎなんじゃない?"って言われてしまいました。あまりにも『ベルサイユのばら』が好きでファンすぎてしまって、自分の中でやりたい世界観が固まりすぎていたんです。そういう固定概念を一度外して新しい気持ちで向き合いました。実際に演じてみると、歴史の重みがすごくありました。アントワネットが子どもと引き離されてしまうシーンが追加されて、夢の世界だけでは終わらない現実も感じられる作品になったと思います。私にとっても夢が叶った、だけでは終わらない、アントワネットを生身の人間として納得のいく人物としてやりたいなと思っていました。
- 湖月
-
難しい世界だよね。様式美がすごくある上で、リアルな部分が中に流れていないと。そこをうまくリンクさせていかないといけない作品です。衣装もきちんと着こなさないといけないし、余計な動きはできない。そういう意味では、無駄をそぎ落としていく必要がありました。
――演じているときのこだわりはありましたか?
- 湖月
-
私は、どちらかというとアンドレ派だと思うんです(笑)。野性的で男臭い感じのイメージをお持ちだと思うんですが、フェルゼンは貴公子。もちろんそこを要求されます。フェルゼンはモテますしね(笑)。でもなぜ彼がモテるのかというと、行動力なんですよね。もちろん身勝手ではありますけど、決めたことを貫く力が強い。育ちがいいので、身のこなしはとてもソフトだけれど、中身はすごく強いんです。それをやっているうちに感じるようになって、私なりの、あたらしい解釈のフェルゼンを作りたいと思いました。愛に対する思いは、男気深く作ったような印象があります。
- 白羽
-
もう、いろいろありすぎて…。私にとってはお披露目公演なんですが、作品が大きすぎましたし、すでにトップとして活躍されていたわたるさんの相手役ということのプレッシャーも大きかったです。この『ベルサイユのばら』という作品の世界観を絶対に壊してはいけないという思いもありました。私自身、アントワネットの輪っかのドレスに憧れていたので、小さい女の子があの時の私のように憧れてくれたらいいなという気持ちもありましたね。でも、それだけで終わらせてはいけない。もし私のセリフが飛んでしまっても客席から次のセリフが飛んでくるくらい、お客様はこの世界観を大切にされています。そういう中で、再演で追加されたシーンを観たお客様から“とても良かった”というお言葉をいただけて。ただキレイだけじゃなく、刺さるものがあったと言っていただけて、嬉しかったですね。本能的な女性の母性がありながら、許されない愛にも向かってしまう。本当にいろんな角度がある役でした。
- 湖月
-
本当に一緒の場面が少ないよね。二人は愛し合っても、なかなかアントワネットは王妃になれなくて、彼女のためにフェルゼンは身を引くんです。そして再び出会ったときにアントワネットは王妃になっていて、母としての強さとか別れを告げた当時には持っていなかったものを革命を通して得ていて、それで彼は身をひいてしまうんですけど。そういうことを経た後の牢獄のシーンは、役者にとっても面白いシーンになったと思います。
――作品としては11年前の作品になるんですが、本当に昨日のことのように思い出があふれ出てくるんですね
- 湖月
-
全国ツアーと韓国でも『ベルサイユのばら』をやっていたんです。若い二人の、それこそ舞踏会で出会ったころからのお話でした。ショーも上演していたので、1時間半のスピーディなものでしたが、そういう意味ではいろんなシーンをやらせてもらっていたからかも知れませんね。
- 白羽
-
なかなか出会いのシーンから演じられることはないんです。大劇場公演のほうは、すでに愛し合っているところから始まりますし。
- 湖月
-
出会いからやっちゃうと、ものすごく長くなっちゃうもんね(笑)。全国ツアーを先にやらせていただいて、出会いのシーンを舞台上で経験できたことで入りやすかったんじゃないかと。
- 白羽
-
そうですね。私は大劇場公演のお披露目ではあったけれど、それまでに全国ツアーでやってきたこともあるという気持ちもあったので、緊張やプレッシャーだけではない気持ちで舞台に立てていたと思います。
――そんな『ベルサイユのばら』をはじめ、お二人は宝塚歌劇でたくさんの役を演じてこられました。今振り返ってみて、宝塚はどんな日々でしたか?
- 湖月
-
ありきたりですけど…青春ですよね。長い長い、青春。宝塚って、行かれたことありますか?本当に誘惑のない街なんです(笑)。逆に、宝塚に没頭できる街なんですよね。ずっとお稽古に没頭できる。ほんと夢中で駆け抜けた日々でした。きっと大変だったんだと思うけど、いい意味での苦労話なんか(笑)、そういうことばかり思い出しますね。退団してから改めて客席で観させてもらっても、世の中にいろんな舞台がある中で、本当に世界にひとつ。唯一無二の素晴らしい劇団だと思います。昨年『シカゴ』という舞台でニューヨークに行かせていただいたんですが、そこでも宝塚に対する認識があって、私がOGだったと認識しているかどうかわからないんですが(笑)、"タカラヅカが来る!"とすごく喜んでくださっていて。100年を超える歴史の中の18年、居させていただいたんですが、私は何か駅伝のような感じがするんですよね。学校はずっとそこにあるんだけど、走っている人は変わっていくわけじゃないですか。でもそこにある精神は変わっていなくて。私はトップスターとしてとても重要なタスキを受け取って、それを渡して、卒業して。その時代を懸命に走っている人たちを支えている人たちって、結構変わらないんですよ。そういう人たちに支えられながら、時代を駆け抜けていく。本当に素敵なところに居させてもらったな、と思います。
- 白羽
-
私も、やっぱり青春だったなと思いますね。私、不器用なので…。
- 湖月
-
大丈夫、大丈夫、そんなに器用な人は世の中に多くないよ(笑)。
- 白羽
-
(笑)。でも本当によく泣きましたし、怒られたっていうわけじゃないですけど…。でもそれ以上によく笑っていたと思うんですよ。夢が叶ったからこそ、下級生の頃は怖いもの知らずというか(笑)。今のほうがいろいろ考えちゃって、どうやってたっけ…って怖くなっちゃうと思うんです。若かったからというのもあるんですが、機会を与えていただけるからこそ、そこに向かって一生懸命になれる。どの世界もそうかも知れないですけど。私が卒業してから思うのは、宝塚という場所で育ててもらったからこそ、今女優としてのお仕事があるし、夢の世界を青春のように駆け抜けてこれらたのは幸せな人生だったなと。今の女優のお仕事も大好きなので、宝塚時代の色々な経験を越えられるくらいの素敵な作品に、これからもどんどん出逢って挑戦していけたら良いなと思います。
――退団されてから、こうやってお会いになるのはお久しぶりなんですか?
- 湖月
-
この間、ちょっと会いました。昨年末から今年にかけて『エリザベート』のガラ・コンサートがあって、一緒にやった作品ではないんですけど、一緒のステージに立つ機会があって。あと、マグノリアホールという宝塚歌劇の創設者・小林一三先生のホールがあるんですけど、そこでもちょっと、ね。船のシーンもちょっとやったんですよ。
- 白羽
-
歌う機会は結構あるんですけど、セリフを言う機会はあんまりないので、ドキドキしてしまいました。お稽古の時に、(セリフも)やろっか、って言われたときは…。
- 湖月
-
割と引き気味だったよね。
- 白羽
-
断ろうかと思いました(笑)。
- 湖月
-
でも、お客様が覚えてるわけ。歌の流れから、セリフ来るでしょ?って。本当に一部分でもいいから、ちょっとセリフを言おうって。
- 白羽
-
懐かしかったです。…そして、やってみたらすごく心地よくって(笑)。感覚的に覚えているものなんだなって。
――先ほどのスチール撮影でも、お二人がピタッとはまる感じがしてとても素敵でした。当時と今とで、お互いの印象は何か変わりましたか?
- 湖月
-
変わらないですね(笑)。テレビなんかで彼女が出ているのを見ると、ついつい手を止めて見てしまいますけどね。
- 白羽
-
ありがたいことに現役時代から変わらず優しくしてくださって。私としては、少し申し訳ないな、って。私と一緒にいるときは、面倒を見る立ち位置に居てくださるから…。
- 湖月
-
他ではしっかりしているらしいんですけど、なんか心配だな、っていう気持ちになっちゃって(笑)。でも改めて、対談してからもこうやって話すことができるって本当に幸せなことだなと思います。あの時に出会っていなかったら…コンビを組むって本当に偶然なんです。
- 白羽
-
そうですね。本当にご縁だと思います。
- 湖月
-
末永く、よろしくお願いしますね(笑)。
――では最後に、今回の「ベルサイユのばら」特集をご覧になる方にメッセージをお願いします
- 湖月
-
宝塚を語るうえで、『ベルサイユのばら』は欠かせない作品だと思います。この世界を、そして宝塚の世界を存分に堪能していただけたらと思います。
- 白羽
-
本当に宝塚らしい華やかさがある作品なので、『フェルゼンとマリー・アントワネット編』はもちろんですけど、『オスカルとアンドレ編』などいろいろ放送されるので、いろいろな角度から楽しんでいただきたいと思います。
撮影/松井伴実
取材・文/宮崎新之
©池田理代子プロダクション・TMS イラスト・姫野美智
『6~7月「ベルサイユのばら」特集』
放送直前ナビ
5/29(月)19:45~、5/30(火)22:45~、
5/31(水)17:45~、6/1(木)15:45~、
6/2(金)17:45~、25:15~ほか
原作者・池田理代子のインタビューから
舞台で共演した湖月わたる、白羽ゆりの対談など
盛り沢山でお届け!
ナレーションはアニメでアンドレ役を
担当した志賀太郎!
<6月の特集>
©2005 I Want Candy LLC.
映画『マリー・アントワネット』
6/2(金)23:00~
池田理代子原作「ベルサイユのばら」より
©宝塚歌劇団
©宝塚クリエイティブアーツ
舞台『ベルサイユのばら -フェルゼンとマリー・アントワネット編-』
(2006年・星組・宝塚大劇場)
6/10(土)23:30~ほか
池田理代子原作「ベルサイユのばら」より
©宝塚歌劇団
©宝塚クリエイティブアーツ
舞台『ベルサイユのばら -オスカルとアンドレ編-』
(2013年・月組・宝塚大劇場)
6/17(土)23:30~ほか
<7月の特集>
©2012 GMT PRODUCTIONS-LES FILMS DU LENDEMAIN-MORENA FILMS-FRANCE 3 CINEMA-EURO MEDIA FRANCE-INVEST IMAGE
映画『マリー・アントワネットに別れを告げて』
7/21(金)23:00~ほか
©BOREALES
「逃亡の24時間 ~ルイ16世とマリー・アントワネット~」
7/28(金)23:00~ほか
©2008 GK Films,LLC All Rights Reserved
『ヴィクトリア女王 世紀の愛』
7/7(金)23:00~25:00ほか
©2005 I Want Candy LLC.
©池田理代子プロダクション・TMS
池田理代子原作「ベルサイユのばら」より
©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ
池田理代子原作「ベルサイユのばら」より
©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ