ゲスの極み乙女。 スペシャルフォト・インタビュー

予想もつかない曲展開で独自のポップメロディを繰り出す4人組バンド、ゲスの極み乙女。1月24日には5枚目となるシングル「戦ってしまうよ」をドロップする彼らが、MTVの人気企画MTV Unpluggedに出演することが決定した。アコースティックを基調とするこのステージに、彼らはどのように挑むのだろうか。

「普通のライブに出演するより特別な感じがしました」

――MTV Unpluggedに出演されると決まった時は、どのようなお気持ちでしたか?

「MTV Unpluggedは誰でも知っている番組で、僕も好きで観ていました。Oasisのノエル・ギャラガーがやっていた時の音源をめっちゃ聴いていたし、そんな場所に出られるんだと思うと…普通のライブに出演するよりも、特別な感じはしましたね。出られるとも思っていなかったので、びっくりしました。最初、ウソかと思って、なんて意地悪なことをするんだと思ったくらい(笑)」

「番組を知ってはいたんですけど、自分たちとは結び付かなかったですね。まさかゲスでMTV Unpluggedに出ることになるとは、って感じです。エリック・クラプトンのときのを僕も観ていたので。歴史あるライブというイメージだったので、自分の音楽人生の中で出演できるというタイミングが来るとも思ってなかったですね」

「日本のアーティストでも宇多田ヒカルさんとか、世界的な活躍をされている方が出ているイメージだったので、本当に自分たちとは繋がらないものだと思っていました。だから、出演を聞いたときは『あっ…ほんと…?』みたいな(笑)」

「すごく嬉しかったです。高校生のときにKREVAさんがさかいゆうさんとコラボしていたステージを観ていましたし、まさか出られるとは、という感じです。今は、どんなステージになるのか楽しみですね」

――どんなイメージのステージにしていきたいですか?

「僕らの場合、アコースティックなものというのがなかなか想像できないんじゃないかと思うんですよ。普段からゆったりした曲とか、アコースティックなサウンドを多用していれば、そんなに変わらないかもしれないけれど、僕らは幅広いので。いい意味で裏切ることができるサウンドにしていきたいですね」

「けっこうリードトラックなんかは派手な印象を持っている方が多いと思うんです。でもそれだけじゃなくて、他にもいい曲いっぱいあって、音楽性も幅広い。そんな部分も知ってもらうことができる場になればいいな、と」

「MTV Unpluggedに向けてアレンジがどうなるのかも楽しみですね。やっぱり、絵音さんはアレンジ力もあるので。期待しています」

「普段は電気もバリバリ使っているので、アンプラグドで、生の楽器でやれることは楽しみですね。ゲスでは使っていなかったけれど、アンプラグドな楽器ならではの表現ができると思うので」

――アンプラグドの魅力はどのようなところでしょうか?

「曲の良さがすごくわかるんですよ。どんどんそぎ落とされて、曲の良さを包んでいたオブラートが無くなっていくので。改めて曲の良さを実感してもらえると思います」

「曲が素っ裸になるよね。飾ってたものが無くなる。飾ること自体は悪いことじゃないけれど、いつもと違う感じで聴けるんですよね」

――すっぴんを見せるのはなかなか演奏者としては怖くもあるのでは?

「そうですね。緊張感はあります」

「でも、芸能人のすっぴんって、だいたいちょっと塗ってたりするから(笑)。そういうことはもしかしたらあるかも」

――すっぴんなのに、唇がうるうるなことありますよね。ヌーディーなすっぴん風な感じというか…。

「うん。コンセントは…少し使いたい。少し(笑)」

「ヌーディーなすっぴん風でいきましょう(笑)」

「いこかは、すっぴんもキレイだから」

――自信をもってアンプラグドな"すっぴん"を見せていきましょう(笑)。ちなみに、先ほどもこれまでのMTV Unpluggedで印象に残っているアーティストを挙げていただきましたが、どういったところが記憶に残っていますか?

「僕はさっき挙げたエリック・クラプトンが最初のMTV Unpluggedだったんですよ。当時高校生で、音楽をガチガチにやっていたわけでは無いんですけど、ずっと聴いてました。父がベータのビデオテープでMTVをたくさん録画していて、よく観ていたんですよね。でも、そのステージに衝撃を受けたというイメージでもなくて…。スッと入ってくる感じで、何度も何度も、ずーっと聴いていました」

「私は宇多田さんのMTV Unpluggedを、そのライブでドラムを叩いていた方を観たくて知ったんですよ。ジョン・ブラックウェルさんなんですけど、大好きで。後ろに銅鑼を掲げてドーン!ってやっていたり、ここじゃなきゃできないなという演出がいっぱいあって。ジョン・ブラックウェルが好きで、宇多田さんに辿り着いたんです」

「宇多田さんを知るのに、そんなルートある?そんな人いるんだ(笑)」

「いや、宇多田さんのことはもちろん知ってる! ドラムの人経由で、MTV Unpluggedの宇多田さんのステージを知っただけだから!」

――そうですよね(笑)。アンプラグドという形だからこそ、メインとなるアーティスト以外の演奏も際立って聴けるという部分もあるかもしれないですね。

「MTV Unpluggedのステージって、演奏もそうなんですけど演出も素敵なんですよね。KREVAさんのときも、電球がいくつも下がっているような照明で、音と照明が合わさってとってもキレイだったんです。そこは印象に残っていますね」

「僕は、平井堅さんのステージですね。平井堅さんの声がすごく好きで、エッジボイスの入りがすごくきれいだったんです。声が映えるのがやっぱりいいですよね」

「バンドサウンドに隠れていた部分を聴かせたい」

――MTV Unpluggedは客席との距離感もすごく近いので、声のニュアンスなども届きやすい部分がありそうです。そんな印象に残っているステージを踏まえつつ、ゲスのMTV Unpluggedのコンセプトをどのようにしていきたいか、お聞かせください。

「何人かサポートの方を入れてやりたいですね。僕らの曲は、わりとコーラスが多いんですけど、アンプラグドだとそこももっと映えるなと思っていて。バンドサウンドに隠れていた部分だと思うので、そういうところをしっかり聴かせていきたい。だから、選曲も"これはアンプラグドではやらないでしょ?"というような楽曲もどんどん入れていきたい。その方が面白いかな、って。『キラーボール』とかは入れたいな。ちょっと違う見せ方をしたい。アレンジの楽しみはありますね」

「私の場合は…キーボードじゃなくてピアノになるんですかね、やっぱり。もともとジャズをやっていたので、そういう要素は入れていきたいです。でもジャズをやってた頃からは、ちょっと時間が経っていて、忘れているかも…(笑)」

「ドラムってもともとアンプラグドなんですが、周りがアンプラグドになると、ひとりだけうるさい楽器になっちゃう。でも、そこをうまく調節して、周りとうまくできるはず。ドラムだけじゃなくて、他のできることも見つけられたらと思います」

「今回、初めてウッドベースに挑戦するんですよ。まったく弾いたことないんですけど…ドキドキです(笑)。めっちゃムズかしいですね。そういう意味でも緊張感あります。最初やるって聞いたときは、ヤバいな…と思いましたね」

「課長はプレッシャーかければかけるほど、良くなるタイプだから」

「でも、こういうフォームでやってください、っていう構え方をするとお腹がちょっと当たって…キュッと出ちゃう。だから今、自分なりのポジションを探しています」

「痩せるっていう選択肢はないんだ(笑)」

――休日課長さんのTwitterの#本炭(本日の炭水化物)を楽しみにしてらっしゃる方も多いですから(笑)。セットリストについては、何か考えていらっしゃいますか?

「普段ライブでやらない曲や、リード曲じゃないような、隠れた曲を出していきたいですね。ファンじゃない人にも届けられたらと思うので。コアなファンが選ぶベスト盤みたいなセットリストにしたいかな。でも、リード曲だとしてもガラッと変わっちゃうから。全部新曲みたいな感じで聴いてほしい気持ちですね。メロディも変えちゃってもいいかも位思っているので」

――それはファンも聴いていて楽しそうです。

「僕らは曲を作るときに、けっこう途中でメロディ変わっちゃったりするんですよ。『オトナチック』とか、前のメロディも結構よくて、結構みんな覚えていたりするんです。そういう作る過程のメロディなんかをやってもいいかな、と。いまだにあれの方が良かったんじゃないかと思う時もあるくらいだし」

――MTV Unpluggedという特別な場所だからこそ、そういうこともできるということですね。途中でメロディが変わることもある、というお話しでしたが1月24日にリリースされるシングル「戦ってしまうよ」はなんと30分で出来上がったそうですね。

「曲作りはスムーズでしたね。キーワードの指定はあったんですけど、その中でどれだけ遊ぶか、という感じでした。キャッチーなサビにするだけにしたくなくて、途中の展開なんかは遊び心を入れてみたり。そしたら、出来上がりがちょうど3分くらい。タイアップになっているゲームアプリの試合時間と偶然同じになりました」

――セリフのような部分などドラマテッィクな展開で、3分で駆け抜けていく感じが心地よかったです。

「発表前からライブではやっていて、ライブ映えする楽曲なんですよ。僕らの曲は、最初わかりにくいものも多いんですが、この曲はとても分かりやすかったみたいで。タイトルも言っていなかったので、みんないろいろと言っていましたね。『チェックメイト』って言っている人もいたし、最初から『戦ってしまうよ』って言っている人もいました。空耳で『肩パット仕舞うよ』って言っている人もいましたね(笑)」

――肩パット(笑)。バブルが終わったのかな?って感じですかね(笑)。

「そんな曲、絶対に書くわけ無いんですけど。そんなサビ、終わってるじゃないですか(笑)」

「一時期、はやったね。『肩パット仕舞うよ』(笑)」

「この曲のレコーディング自体、すごく久しぶりだったんですけど、やっぱり4人っていいなと思いましたね。久々にドン、ってやってみたら、なんかスゴイいいなって。バンドやっている感じになりましたね。ライブでやっていても、新曲なのに昔からやっているような感覚があって

「新曲って、やっぱりライブでやる前に"新曲だ…"っていう緊張感があるんですけど、この曲は何年もやってたような。何なら頭振りながら、楽しみながら演奏できましたね。確かに、スッと入ってくる感じがあります」

「弾いているとき、単純に楽しいんですよ。新曲の緊張ってないかもしれない」

「4人で合わせてる感、音がまとまっている感じが気持ちいいんですよ。4人で前を向いてやっている感じがしますね」

――MVも寝転がってスマホをいじっているような、ちょっと面白い映像でしたね。

「あれ、実際にゲームアプリをプレイしているんですよ。でも、あの映像って俯瞰で撮っているように見せながら、実際は立っている状態なので、単純につらかったですね。布団とかも下から入ったんですよ。Bonoboという海外アーティストが日本の引きこもりをテーマにMVを撮っていたんですが、それがだまし絵みたいになっていて。そういう面白いことをしたいよね、と監督と話をしていたんです。『戦ってしまうよ』という楽曲も、ゲームを遊んでいるようでゲームに遊ばれている、自分たちが便利に使っているようで実は使われているというような意味も込めているので。ストーリー的にも結末がちゃんとあるので、楽しんでいただきたいですね」

「聴いたことない、という楽曲が揃っているシングル」

――カップリングについてもお伺いします。M2「イメージセンリャク」は、正直なかなか攻めたタイトルだな、と思いました。

「カップリングを作る時間が結構が無くて、岡山にツアーで行ったときにライブハウスのフロアに楽器を置いて前日に作ったんですよ。なんも考えていなくて(笑)。カップリングっぽい曲を作ろうと思って、ちょっとNUMBER GIRLみたいに激しめにしようとしたんだけど、なんかサビが哀愁漂う感じになってきて。そっちじゃない~と思いながら、よくわからない展開つけて。でも、みんなサビを良いね、って言ってくれたんですよね。ちょっとキャッチーで切なくも聞こえる。僕は一番、気に入っていますね。本当の自分なんて無いと思うんですよ。他人に見えているものが自分の全てで、本当がどうとかない。そこをみんな考えようとしていない感じがあるんですよね」

――怒涛の如く流れ込んでくる言葉に身をゆだねてしまう快感がありますね。M3「息をするために」についてはいかがでしょうか。

「このトラックはかなり前からあって、両成敗の頃にはもうあったんです。2015年の夏にはもうありました。『戦ってしまうよ』と『イメージセンリャク』がガツガツ系なので、ちょうどバランスがいいかなと思って。意図的になんですがIindigo la Endと住み分けるためにAメロが早口になるんですよ。例外はあるんですけど。この曲はストレートにゆったりとAメロから歌っていて、いこかさんと一緒に、オクターブ下を僕が歌う。新しい感じがありますね。アンプラグドにも合うんじゃないかな」

――確かに、アンプラグドっぽさはありますね。最後のM4は、1stミニアルバム「ドレスの脱ぎ方」に収録されていた「ぶらっくパレード」を、AmPmさんがアレンジされています。

「自分たちでアレンジをしていないから、自分たちの曲をこんなふうに料理するのか、と単純に面白かったですね。AmPmさんのアレンジが素晴らしかったので、ファンの人にとっても、こんな風になるのか、と面白いと思います。昔の曲って、自分でも若いなーと思うんですけど、リアレンジしてもらうと、その若さが抜けていい感じになるんですよ。サビのリズムなんかは、驚きましたね」

――今回のシングルの仕上がりはいかがでしょう。

「『戦ってしまうよ』だけを聴いて買ってくださった方も、ゲスの極み乙女。のほかの曲も聴いてみたいなと思わせる1枚になったんじゃないかなと思いますね」

「レコーディングしてみて、まだまだ新しいことがやれるなと思ったくらい内容が充実しているので、楽しんで聴いていただきたいです」

「引っかかる部分が入ってる1枚になっているので、してやったり、という気持ちでいます。この感じ、聴いたことない、というものが揃っていますので」

――今後、ゲスの極み乙女。としてどのように展開していきたいですか?

「結成6年目になるんですけど、10周年に向けてあと5年。長い目で見て、この5年をどうしていくかを考えたいですね。いっぱい曲を出しながら、4人で同じ目標を…走るっていうよりは、走ったり歩いたりという感じですかね。けっこうみんな、走り抜けようぜ!とか言うと思うんですけど、ゆっくり歩いていく方がいい。いろいろ考えたこともあったし、自分の未熟だったところもあったから。人生は何が起こるかわからないし、ゲスの極み乙女。としてこうやってインタビューを受けていること自体、結成当初は考えられないくらいだったから。だから、10年目も面白くなるだろうし、10年後はもっと面白くなる。何が起こるかわからない方向に向かって、ゆっくり歩いていきたいと思います。バンドがあれば、何があっても大丈夫だと思っているので」

「もう、それ!って感じです(笑)。今の私があるのが、ゲスの極み乙女。があったから。これまでも面白いなと思ったことをやってこれたと思うんですけど、個人の活動も始めたこともあるけど、核となっているゲスの極み乙女。の活動も、本当に新しいことにチャレンジしつつ、楽しんでいけたら」

「たくさん吸収して、たくさん還元して、個人としても、ゲスの極み乙女。としても、充実していたなと思えるような活動をしていきたいですね」

「え、死んじゃうの?(笑)」

――何かそんな深刻さがありましたね(笑)。休日課長さんはいかがですか?

「痩せる!」

「いやいや…(笑)。まずは、ウッドベースですね。目の前の」

「でも、ちゃんとしたフォームが出来ないんでしょ?痩せないと」

「ちゃんとしたハマり方を見つけたい」

「なんでそこを努力しようとしないの?」

「でも、太ってる人のフォームを見たらいけるかもって」

「確かに、課長みたいな体型の人、ウッドベースにいっぱいいるかも」

「そう!なのでまぁ、まずはウッドベースですね」

「頑なに痩せないんだよ(笑)」

――将来、ゲスの極み乙女。としてどんなふうになっていたいですか?

「何十年も続けていて、ずっとリリースしているようなバンドっているじゃないですか。そういう、色あせないよね、今もいいよね、って言われるようなバンドに何十年後もなっていたいですね」

「何年たっても、楽しんでるな、と思われるバンドでありたいですね。全力でふざける、というのがゲスの極み乙女。の自分の中のテーマなので」

「待たれる存在、期待される存在でありたいですね。そのうえで、期待を裏切ったりもする。そんなふうにやっていきたいです」

「僕は…中国で微博を始めたいですね。中国は市場が一番大きいですし、世界を視野に入れていきたいです」

――世界戦略ですか! 今後の活躍を楽しみにしつつ、まずはMTV Unpluggedに期待したいと思います。本日はありがとうございました。

撮影:渡部孝弘
取材・文:宮崎新之

「MTV Unplugged:Gesu No Kiwami Otome」

「MTV Unplugged」は、"プラグを抜いた"の意の通り、アコースティックな手法とオーディエンスとの親密な距離にこだわり、独特の緊張感と一体感に包まれたライブ空間を実現する、MTVが誇る大人気企画。
1989年にニューヨークで初めて実施されて以来、エリック・クラプトンやマライア・キャリー、オアシスといった音楽界のスーパースターから、アデル、ケイティ・ペリー、アダム・ランバートらポップシーンの実力派まで、100組を超えるアーティストが出演し、「出演できるのは一流の証」とさえ言われている。
今回このステージに立つのは独自のポップメロディを奏でる4人組バンド、“ゲスの極み乙女。”。
デビュー以来、高い演奏技術を駆使した何が起こるかわからない曲展開に、全てを飲み込んでしまう声で多くの音楽ファンを魅了している。
プログレ、ヒップホップを基調とし、独自のポップメロディを奏でる彼らが、MTV Unpluggedでどのようなステージを展開するか見逃せない!

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